天田財団_助成研究成果報告書2024
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000000000 図2■その場アニール成膜の臨界剥離強度 部分剥離完全剥離ジルコニア基板の温度を制御しながら所定の成膜時のアニール温度に設定した。500℃のアニール温度で精度は±5℃以内の精度で行った。成膜時に0.1 TorrのH2O雰囲気中で加水分解を行い、同時に所定の温度でのアニールを行いアパタイト結晶へと変化させる“その場アニール”とRFマグネトロンスパッタリング成膜を模擬し、加水分解を生じないよう0.1 TorrのAr雰囲気中で成膜時を行い、その後0.1 TorrのH2Oガス中で加水分解を行う“ポストアニール”の2種類でのアニール方法での成膜の密着力を評価した。アブレーションレーザーにはYAGレーザーの第4高調波(波長266 nm, パルス幅10 ns、繰り返し周波数10 Hz)を用いた。ターゲットには3リン酸カルシウム(-TCP)を圧縮、焼結したものを用いた。全ての成膜は同じ照射条件で1時間行った。その場アニールにおいては成膜と同時にアニールを1時間行い、アニール温度は室温から600℃までで変化させた。また、ポストアニールでは液滴除去のためAr中で成膜を行った後、ArからH2O雰囲気に変化させ加水分解を行うとともに600℃でアニールを1時間行った。ポストアニールでは成膜時に室温の24℃、高温の600℃の2種類の温度で成膜を行った。 ■密着力の測定には表面での励振を伴い臨界剥離荷重を測定できるマイクロスクラッチ試験機(RESCA CSR2000)を用いて測定した。全ての成膜試料は水平方向に45 Hzで100 m幅に励振しながら荷重を線形に増加させ測定を行った。ダイヤモンドスタイラス15 m直径、スクラッチ速度10 m/s、掃引時間は60 s、最大荷重200 mNで同様の設定で全ての試料の臨界剥離荷重の測定を行った。  ・ ■その場アニール成膜の密着性の温度依存性 図2にその場アニールで成膜した典型的なスクラッチ痕の写真、掃引時間に対するスタイラス信号、付加荷重を示す。荷重は線形に増加するように設定されている。室温から■■■℃の範囲の成膜のスクラッチ痕の形状は■つに大別できる。図2Aに示すように、室温以上200 ℃以下では低付加荷重で剥離が生じる。200℃以上350℃以下では図2Bの様に明確な剥離が生じずスタイラスが徐々に成膜を研削する結果となった。360℃以上では図2Cの様に高付加荷重で剥離が生じるものになった。図2A及びBはこれまでの研究からアモルファスであり、図2Cは結晶に相当する5)。図2Bでは2A及びCの様にスクラッチ痕、スタイラス信号の両方から剥離を評価することができないが、図2Bで分かるように励振の端から研削が生じはじめ、徐々に中央を含む全域にわたって研削が生じている。図3に図2A、Cの臨界剥離荷重、図2Bの部分的研削から全域の研削の荷重のアニール温度依存性を示す。図3に示すようにアニール温度の上昇に依存してジルコニア基板との密着性が上昇していることが分かる。■ ・■■ポストアニール成膜の密着力の温度依存性 図4A、Bに成膜後ポストアニールを行った成膜物質のラマンスペクトルを示す。図4Aは室温で成膜、図4Bは600℃で成膜した結果である。両者ともにアパタイト特有のPO4振動に由来する中心波数960 cm-1付近の単一のラ■マンスペクトルであった。A、Bの半値全幅は13及び8 cm-1であり、アモルファスCaPの中心波数950 cm-1、半値全幅27 cm-1と比較して大幅に波数シフト及び狭帯域化していることが分かる。この結果からポストアニールを行った成膜はアパタイト結晶へ変化したことが分かる。■2.01.51.00.52.01.51.00.52.01.51.00.5T=24CT=329CT=654C10304020掃引時間[sec]103010304020掃引時間[sec]200150100505060200150100504020掃引時間[sec]5060200150100505060− 236 −(A)(B)(C)

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