キーワード:レーザーアブレーション,ハイドロキシアパタイト,ジルコニア、密着力、マイクロスクラッチ試験機 ■2.実験方法及び結果 ■ ・■■実験装置及び実験方法■-TCPターゲットH2OH2OH2OH2OH2OH2OPOCaハイドロキシアパタイト図1■実験装置図 液滴ヒーター回復するため人工の補綴材料、すなわち生体用インプラントが用いられてきた。高年齢化とQOL(Quality of Life)の向上からインプラント手術の件数は年々上昇し、2023年現在では世界中の整形外科のインプラントの市場規模は約1113億米ドル程度で7.2%の成長が見込まれている1)。歯科用インプラント、人工膝関節、人工股関節などがその代表例である。それらの母材は機械的強度、生体親和性の観点から純Ti、Ti(6Al4V-Ti)合金、CoCr合金などが主として用いられている。しかし、これらの金属材料は磁性の弱い純Tiの場合でもMRI(Magnetic Resonance Imaging)法においてもアーチファクトを生じる2)。つまり、人工膝関節置換手術後の膝周囲の腱、筋肉等の軟部組織の回復の可視化を阻害する。また、Ti以外の金属材料は生体親和性に乏しくイオンが溶け出す事で希に金属アレルギーを誘発しインプラントとの骨固着を阻害する。歯科用インプラントにおいては歯周病に伴う歯茎の短縮からインプラントの金属部分が透けて黒く見える審美性の問題も指摘されている。この様な問題解決のため、金属材料をジルコニアセラミックス(以下:ジルコニア)で置き換えることで、MRI、金属アレルギー、審美性の問題などが解決できる。しかし、ジルコニアは生体親和性が高いが、Tiに比べて骨伝導性に劣ると言われている。そのため、高機能性ハイドロキシアパタイト(以下:アパタイト)をジルコニア上に成膜できれば歯科用インプラントとしての問題解決につながると期待される。一方、インプラント埋殖手術中、術後の生体内でのアパタイト膜の剥離は体内で異物と感じ、炎症を起こす懸念がある。そのため、低密着力、多孔質で亀裂、剥離を生じやすいアパタイト膜は必ずしもTi製歯科用インプラントなどでは普及していない。■■産総研ではパルスレーザーアブレーションを利用したPLD法(Pulsed-laser deposition)の研究を行い、アブレーション時に放出される液滴が多孔質化、低純度、高アニール温度が必要になるなど大きな欠点があることを実証してきた。3■4)その結果、液滴を排除可能なPLD法であるエクリプス型PLD法で成膜することで、これまでにない低温での高結晶化、高純度化、緻密なアパタイト成膜ができることを実証した5)。この方法はアブレーション粒子の内、慣性の大きな液滴を幾何学的に障害物と衝突させ1.研究の目的と背景 ■整形外科、歯科等の分野では失われた機能を以前同様に産業技術総合研究所■電子光基礎技術研究部門■( ■ ■年度■一般研究開発助成■■■■ ■ ■ ■■■■)■屋代■英彦■基板に成膜せず、慣性の小さな原子、分子状の粒子を衝突させることなく後方の基板に付着させる方法である6)。主として原子状の物質で成膜することで緻密で界面まで水が浸透しにくい。また、成膜物質は加水分解で完全にアパタイト結晶化するので、低純度でアパタイト以外のリン酸カルシウムの粒塊を溶かし結果的に多孔質になってしまう懸念がない。また、高結晶性で溶けにくいが生体内活性であり、他のリン酸カルシウムの様に溶けて骨に置換することなく、表面に生体骨形成を促進する。このため、生体内で長期間存在し骨伝導性を発揮し、成膜表面に生体骨形成が促進される。これは従来の生体骨が隙間なく形成しアンカー効果で固着するオッセオインテグレーション7)の状態より早期かつ強固な骨固着が期待できる。このため、この高機能性アパタイト成膜は骨固着を伴う生体用インプラントに非常に有用であると考えられる。さらにアパタイト成膜がジルコニア母材と強固な密着力を持てば、アパタイト膜を中間層としてジルコニア母材、生体骨が強固に固着することになり、特にジルコニアインプラントには大きな改良につながると期待される。このため、エクリプス型PLD法でジルコニア基板上に成膜した膜の密着性を評価した8)。■■ジルコニア基板上のアパタイト成膜はエクリプス型PLD法にて成膜を行った5)。図1に実験装置を示す。予め成膜と同じ圧力雰囲気でジルコニア基板はセラミックヒーター上に設置し、ジルコニア基板表面に取り付けた熱電対とセラミックヒーターの熱電対の相関関係を測定し、YAGレーザー(=266nm,=10ns)Ca障害物アブレーションプルーム− 235 −ハイドロキシアパタイト成膜の密着力の温度依存性■液滴を排除した■■■法によるジルコニア基板上■
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