Laserη:0.003%ConventionalSulfurizationη:1.60%ルから、走査時間の増加とともに結晶化が進行することがわかる。照射試料のSEM像は、特に前駆体の下部領域で鋭いファセットを持つ結晶粒を示しており、特に0.02 min/mmの試料で顕著であることがわかる。結晶化が表面から深い位置、Moとの界面側で特に進行しているように見えることから、Mo表面でのレーザー反射による可能性が考えられる。つまり、Mo/前駆体界面は、入射光子と反射光子の両方によって効果的に加熱される。もう一つの可能性は、レーザーの焦点が表面より深い領域にあることである。レーザーパワー、走査時間、XRDパターンの相関を図4に示す。パワー×走査時間は、単位長さあたりの前駆体の入射光子量と線形の相関がある。また、XRDにおける28°近傍のCZTSのピーク強度を40°付近のMoのピーク強度で規格化した値と28°近傍のCZTSピークのFWHMの傾向は、異なるレーザー条件下でも、パワー×走査時間の増大に伴い、同様の傾向で減少していることがわかる。これらの結果は、前駆体の結晶化が前駆体中の入射する光子数に強く依存していることを示唆している。また、レーザー照射した試料の規格化強度は、従来の硫化試料よりも低いことがわかる。このことは、レーザー照射によって結晶化したCZTSの体積が、従来硫化処理よりも小さいことを示唆している。紫外可視分光法で得られた光吸収係数を図5(a)に示す。レーザーを照射していない試料では1.4eVにキンクのような曲線が観察される。一方、照射した試料ではキンクは小さい。これは、レーザー照射によって、光を吸収し得る不均一な結晶種が減少したことを意味する。入射光子エネルギー1.7eV以上では、従来プロセスの方がレーザー照射試料に比べて高い吸収係数であることがわかる。直接遷移型半導体のTaucプロットを図5(b)に示す31~34)。レーザー照射した試料では、光学的バンドギャップエネルギーは1.49eV、従来プロセスでは、1.54eVと見積もることができる。これらの値は、報告されているCZTSの値(1.5eV)に近く、これらの結果から、CZTS前駆体をレーザー照射することで、従来プロセスと比較して結晶化量は少なく、光吸収係数は小さいものの、CZTS多結晶層を形成できると結論した。■・ 太陽電池構造の電気的特性レーザー照射によるCZTS薄膜を実装した太陽電池の試作を行い、光照射下で測定した電流―電圧(JV)特性を図6に示す。電圧に対して指数関数的に電流が増加する整流特性が観察されることから、レーザーアニールによってpn接合が形成されたと考えられる。しかし、従来の硫化処理によって形成された試料と比較すると、レーザーによる試料は非常に小さな開放電圧と短絡電流を示す。ゼロ電圧における傾きの逆数はシャント抵抗を反映し、ゼロ電流における傾きの逆数は直列抵抗を反映する。レーザーを用いた試料のゼロ電圧での傾きは、従来のプロセスよりもは図4. レーザー出力と走査速度の積とXRDパターンのピーク強度の関係図5. レーザー照射による光吸収係数(a)ならびにTauc plot(b)の変化図6. レーザー照射によって形成したCZTS太陽電池の電流-電圧特性。比較のため従来硫化による太陽電池を示す。またレーザー照射試料の拡大グラフも併せて示す。ConventionalSulfurization(a)(b)AM1.5G100mW/cm225oC1.49eV(Laser)1.54eV(Conventional)− 222 −Power ××Scanning Time(mWmin/mm)
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