H2SをN2で5%に希釈した雰囲気(5%H2S/N2)中で560℃ キーワード:レーザー,太陽電池,半導体 で60分間硫化し、前駆体をCZTS多結晶化した。 ■レーザー照射後、X線回折(XRD; Rigaku, Miniflex)、蛍光X線分光(XRF; リガク、ZSX mini II)、レーザーラマン(JASCO、NRS-7200)(励起波長532 nm)、紫外可視近赤外分光法(SHIMADZU、Solid SPEC3700)、電界放出型走査電子顕微鏡(FESEM、Zeiss、Ultra-55)を用いて、結晶性、原子組成、結晶種、光学特性、断面形状をそれぞれ評価した。 ■一部のサンプルには次に示す工程により太陽電池を作(AM1.5G、100mW/cm2、25℃)において測定を実施し電池は、地産地消が可能な発電デバイスであることから、IoTデバイスの有力な自己給電用電源である。しかし、IoTデバイスの中核をなすLSIに実装可能な太陽電池の形成技術に関する研究は十分でない。 ■現在までに、いくつかの種類のCZTS形成プロセスが報告されている11~18)。CZTS形成プロセスでは、一般的に前駆体の形成に続いて前駆体の結晶化を促進するためにH2Sなどの硫黄含有雰囲気中において400~600℃の熱処理(硫化処理)を行う2段階製法が採用されている。CZTS太陽電池の全製造プロセスの最高温度は、この硫化工程の温度がほぼ支配している。したがって、CZTS太陽電池をLSIに実装するためには、LSI製造における特に熱プロセス設計を考慮する必要がある。LSIのFEOL(Front End of Line)工程においては、金属の混入を厳密に管理する必要がある。そのため、多様な金属を含有する化合物薄膜半導体太陽電池の実装は、FEOL工程が終了した後、BEOL(Back End of Line)工程で処理することが適当と考えられる。 ■一方、BEOLプロセスのプロセス温度は、FEOLで形成したトランジスタ内のドーパントの再分布や失活、トランジスタのゲートやメタル配線の信頼性低下を避けるため、約400℃より低いことが望ましい。このような制約を踏まえ、LSI上にCZTS化合物薄膜半導体太陽電池を実装するために、本研究ではLSI内の限られた領域を短時間の熱処理を加えることができるXY走査可能なレーザー照射を提案する。本報告では、レーザーアニールによるCZTS多結晶形成と太陽電池への応用について報告する。 2.実験方法 ■試料を作成する基板にはソーダライムガラス(SLG)基板を採用し、サイズ2.5×2.5cm2を用意した。その後に中1.研究の目的と背景■■Cu2ZnSnS4(CZTS)化合物薄膜半導体は、104cm-1という優れた吸収係数と直接遷移型のバンドギャップ1.5eV1~5)であることから、太陽光を効率よく吸収すると考えられている。さらに、CZTSの構成元素はいずれも地球上に豊富に存在することから、環境調和型太陽電池の実現が期待されている6~10)。 ■Society 5.0において膨大な数のIoTデバイスが社会実装される一方で、その給電方法は課題となっている。太陽長岡工業高等専門学校■電気電子システム工学科■( ■ ■年度■一般研究開発助成■■■■ ■ ■ ■■■■■) 教授■島宗■洋介■性洗剤と超純水で洗浄を行った後、スピンドライヤーで純水リンスを行い、仕上げにUV処理を行った。その後、下部電極金属としてMoをRFスパッタリング法(200W、Ar 20sccm、0.4Pa、60分)で厚さ~1μmを形成した。次に、Cu-poor、Zn-richに制御された焼結ターゲット(原子成分比Cu:Zn:Sn:S=20:16:13:5119~21)を用いて、厚さ800-900 nmのCZTS前駆体をRFスパッタ法(50 W、Ar 20 sccm、0.4 Pa 120 min)により形成した。一部の試料については、CZTSの光吸収係数を評価するために、SLG上に前駆体を直接形成した。次に、波長445 nm、出力99-120 mW、スポットサイズ0.2 mmのレーザーを、XY走査しながら0.05 mmピッチのラインアンドスペースパターンで50-200 mm/minの走査速度で前駆体表面へ照射した。従来の熱プロセスで形成されたCZTSを比較用試料として作成するために、CZTS前駆体/Mo/SLGを成した。レーザー照射後、金属酸化物を除去するために試料を脱イオン水に10分間浸した22)。なお、本プロセスでは、一般に利用されるKCN エッチングは採用していない。次にバッファ層となるCdSを化学浴堆積(CBD)法を用いて70 nmの厚さを形成した。その後にRFスパッタリング(100 W、Ar 10 sccm、0.5 Pa、60分)法を用いて、窓層としてAlドープZnO膜を厚さ300 nm形成し、続いてDCスパッタリング(150 W、Ar 20 sccm、0.65 Pa、60分)法により、上部電極としてAlを厚さ300nm形成した。最後に、メカニカルスクライブを行い、4×4mm2のセルに素子分離を行った。電気特性は、ソーラーシミュレーター(JASCO、YQ-250BX)を用いて標準試験条件た。 − 220 − 薄膜太陽電池への応用に関する研究 レーザーアニールによる光吸収層の局所結晶化プロセスの確立と
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