天田財団_助成研究成果報告書2024
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から発生する磁場をとらえるためには、高空間分解能が必須である。神経細胞の大きさはおよそ20µmであるため、空間分解能も20µm以下でかつ軸索からの磁場を測定するためにアレー状に並べ、神経伝達のスピード(120m/sec)を測定できる素子が必須となる。これらの条件をすべて実現する新しい方法が図3で示す縦型導波路である。図3-a) で示すように個々のNVセンターからの発光を、導波路の壁(クラッド部分)と底面の誘電体多層膜による反射で一方向へ集光するため高効率でNV━センターからの発光測定が可能で、加えて前記2.1で開発した方法を用いることで任意の場所にNVセンターを作成できるようになったため、図3-b) のように導波路内に高品質のNVセンターを数倍に増やすことが可能となる。そして、この素子を並べてアレー状に配置するイメージが図3-c) である。この図からわかるように、アレーの並べ方や大きさは任意に設計できるため、用途に応じた形状の微小磁場測定素子を作製できるというメリットがある。また、この縦型導波路構造は、図3-c)のようにダイアモンドの厚みが導波路長であり、口径が空間分解能となるため、ダイアモンドの厚みを増やせば空間分解能を上げても感度が低下しないという大きなメリットがある。図3縦型導波路構造概念図a)導波路内でのNVセンター発光イメージ。b)光導波路構造図。c)アレー状の微小磁場測定素子構造図2.2.2縦型導波路の作製fsレーザーを用いてダイアモンドの表面から裏面までカーボン化させて導波路を作成した。本実験では、住友電工製HPHT(合成ダイアモンド単結晶「スミクリスタル™」)、3×3×0.5tmmを使用し、ダイアモンドの表面からfsレーザーを照射し、裏面まで加工した。図4は作製した導波路の顕微鏡写真で、ダイアモンドの表面(図4-a))と裏面(図4-b))の様子である。a)b)は、導波路作成に最適なfsレーザー強度を調べるために、レーザー強度を変えて40µm四方の導波路を作製した結果である。レーザー強度を90mWから130mWまで変えて照射したところ(図4-a))表面には違いが見られなかったが裏面ではレーザー強度が強くなるほど導波路が太く滲んでいるように見える。各導波路の中心をとおる線(図4-a))で表面から50µmの位置のPL測定を行った結果が図4-c)である導波路の線の近くでNV-からの発光が確認でき、90mWでの照射が最も多くのNVセンターを生成することが分かった。図4作製した種々の大きさの縦型導波路の様子 ダイアモンドa)表面とb)裏面の顕微鏡写真。a),b)は40µm四方の導波路でレーザー強度を変えて作製。c)は導波路のPL測定結果。次に縦型導波路がNV-からの発光を集光し導波路特性を示すことを確認するために、図5-a) に示す測定装置を作製し、ダイアモンドの裏面から励起光(波長532nm)を照射し、導波路内のNVセンターを励起して発光した赤色光を表面からCCDで観測した2~4)。図5-b)は、element six製CVDダイアモンド、3×3×0.25mmのダイアモンドに、レーザー強度を60mWにして15µm四方の縦型導波路をアレー状に作製した様子である。このアレー状構造の導波路内部と導波路を作製していない部分に励起光を照射してNV━からの発光を測定した。図5-c)は、作製した縦型導波路内部に励起光を照射した様子で、導波路の形状に赤色光が形成されており、励起光の中心部分では導波路内で赤色が反射・集光され、強度が大きく上昇していることがわかる。また、赤色光が隣の導波路へ漏れている様子が観測されており、導波路の閉じ込め効果を強化しなければならないことが分かった。そして、これと同様の構造で磁場を測定する光検出磁気共鳴− 212 −

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