天田財団_助成研究成果報告書2024
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>3mm2m(b)(c)加工時間[s/穴]4600.2-1180580.125■.加工時間の評価5.抗菌パターンの作用■.結言ロール間距離を素材厚さの1/2倍程度になるよう設定し,5秒程度の時間をかけて圧延した.圧延後の板材表面には,光回折による虹模様が広域で観察された.ロール両端部において,虹が強い傾向があった.図8(a)圧延処理によりPETシートに転写された抗菌構造.アルミニウム材に転写された構造.(b)白色干渉計観察による高低マップと(c)斜め観察した電子顕微鏡像. 厚さ200μmのアルミニウムろう材(A4043BY)に対して,微細パターンを圧延転写した.室温での冷間圧延を行った. 図8(b)は,圧延したアルミニウムろう材を白色干渉計で観察した高低マップで,パターンの平均高さは2.35μm,平均幅は1.64μm,凸形状のアスペクト比は1.43が得られた.アルミニウム凸部の高さは均一ではなく,最大部と最小部で0.5-1μm程度の違いがある.パターン長さが長い部分でアルミニウム凸部が高い.パターン長さが短いほど,アルミニウム材料が凹部に入り込むのが難しくなる影響と考えられる.図8(c)は,形状転写したアルミニウム表面の電子顕微鏡像である.壁面は急峻である.微細な凹凸を作る方法は様々あるが,一点加工を繰り返す機械加工やレーザ加工では形状が微細になるほど加工時間が長くなり生産性が低下する.ここで述べた金型製作には全工程で2.5h(デスカム処理も含めてレジストプロセス2.1h,めっき堆積は0.4h)がかかった.これを1億4000万個で割ると微細構造1個当たり約64sとなる.表1は既存の機械(穴あけ)加工に要する時間である6).堆積加工では情報収集と比較が難しかったため,より単純な穴あけ加工と比較した.これら従来加工と比べて加工速度が3桁以上速い.電子ビームドリル(EBD)加工は125ms/穴と比較的速いが,穴径は0.1~1mmと言われる7).立体フォトリソグラフィは約100倍微細な形状に対応できる.表1: 従来の穴あけ加工法と穴一つ当たりの加工時間6)加工法切削加工パンチング電界加工放電加工電子ビームドリルレーザーマイクロテクスチャの効果を確認するために,大きさ1μm程度の乳酸菌を使用した.図8(a)のように抗菌パターンが転写されたPETシートに乳酸菌入りの水滴を乗せた.図9は時間(約5秒)に対する一連の画像である.輪の中心にある乳酸菌は溝に閉じ込められて動いていない.対照的に,矢印で示す乳酸菌は,ダイアモンドパターンに相当する通路上を移動している.これらは抗菌機能の原理である,菌を分散して溝に閉じ込める働きを示す.圧延ロール円筒面に,立体フォトリソグラフィ加工を適用し,幅2μmの微細パターンを一括転写できた.パターン転写では,ガラスマスク上にフォトレジストを成膜することで,マスク-レジスト間ギャップを最小にし,パターンの質を高めた.潜像を予め形成したレジスト膜を変形させつつ貼り付ける潜像法によって,光学的に投影できない高低差を超えて微細パターンを,様々な立体形状に転写できる.このパターンを基に,硬質材料である光沢ニッケルめっきに形状を転写した.直径43mmの圧延ロール円筒面に,幅2μmのダイアモンドパターン(60x60mm2に凹構造が約1億4000万個)を一括転写した.約5秒の圧延加工により凹凸逆となる微細凸形状を転写した.圧延ロール上の形状で溝のアスペクト比2.1,アルミニウム材への転写形状でアスペクト比1以上が得られ,抗菌機能に必要備考但し真空中− 198 −(a)

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