天田財団_助成研究成果報告書2024
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p2/2λp2/λ■.背景キーワード:立体フォトリソグラフィ,マクロテキスチャ,圧延ロール切削加工やビーム加工は,製作形状を微細にするために加工寸法を小さくすると,加工体積が寸法の3乗で小さくなり,加工点を走査して曲面を得るのに膨大な時間がかかることになる.機械加工からのアプローチは生産性を合わせると,溝幅など約100μmが工業的な閾となる.図1に概念図を示す.レーザー加工,放電加工を微細化した報告例では加工サイズが数10μmである1).例えば,ピッチ50μmの2次元ドットアレイを50mm角の面積に敷き詰めるだけでも,100万回の穴加工を繰り返す必要に迫られる.工具製作コストがかかり,細い工具ほど摩耗が速い.対して,フォトリソグラフィは,微細パターンを多点で同時に加工できる特徴があり,微細な複雑構造を持つLSIを工業的に生産可能にしている.加工の素反応は,原子・分子レベルの究極的に細かなサイズで進むため,パターンが微細に得られるほど加工サイズも小さくできる.微細化が進んでもスループットが維持されるため,微細になるほど強力な生産技術である.但し,平面基板にのみ有効で,立体形状が必要な機械部品類とは別分野でしかなかった.機械部品表面にマイクロテクスチャなど微細構造を創る研究は,穴開き薄板のステンシルマスクを使うなど,試行されてはいたが,サイズと形状,共に限定的で発展性は乏しかった.もしも,機能性表面構造を加工することが可能になるならば,流体抵抗の低減や省エネ効果が得られるなど,魅力的な分野が広がる.金型に原形を用意するには,曲面に硬質な微細構造を広域で製作する技術の開発が必要になる.■■■光回折の理論フォトリソグラフィが立体サンプルには適用できない理由は大きく二つある.1つは,スピン成膜で均一なレジスト膜を得る工程で平坦面が前提となることである.もう一つは,パターニング工程でサンプルと平面マスク(またはその像面)が密着することを原理とすることである.細いスリットを通った光ほど回折広がりが大きくなる原則の通り,転写したいパターンが微細になるほど光は回折して,良質なパターンが得られる範囲が狭く,プロセスが難しくなる.パターンが規則的なライン-アンド-スペースの場合,フーリエイメージ面にて議論できる2).図2に模式図を示す.一定ピッチpの明暗格子に対して波長λの光を照射すると,その後流にはある間隔(Talbot長と呼ばれる)ごとに,格子の透過率分布と同じ強度分布が現豊田工業大学大学院工学研究科( ■ ■年度一般研究開発助成■■■ ■ ■■■■■■ )教授佐々木実れる.z=np2/λ(n=1,2,…)で表される[2].自然数nが奇数の位置では白黒が反転し,偶数は白黒が同じとなる.一般的に利用するg/i線レジストの感光波長は400nm程度である.格子ピッチpを4 μmでn=1とすると,z=40μmの距離で透過光の強度分布は格子の強度分布から反転する.この中間の位置で像が完全にぼけることから,サンプルに20μm以上の高低差があると,パターンの質が劣化し,格子パターンが途切れることになる.工具先端の点で加工図1リソグラフィ(多点同時)と機械加工(立体)の領域と,長所同士を組み合わせる理想.図2フォトマスクとレジスト間のギャップで生じる光回折の模式図.■■ パターン転写プロセス図3に曲面にパターン転写する(a)従来および(b)新プロセスを示す.図3(a)の従来プロセスは,立体サンプルに直接フォトレジストを成膜してからパターン転写を行う考え方である.ステップ1)のスピン成膜では,レジストに働く遠心力が基板面と平行でなくなるため,平面基板の理理想想::多多点点同同時時でで機機械械加加工工かかららリリソソググララフフィィかからら11微微細細かかつつ立立体体面で原子・分子の反応平平面面基基板板maskUV− 195 −p圧延ロール面への高アスペクト比機能構造の微細加工

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