天田財団_助成研究成果報告書2024
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図18に,ガラスとSKD工具による摩擦係数の比較を示す.ガラス,SKD工具ともに背圧の増加するにつれて摩擦係数が減少する傾向が見られた.また,SKD工具と比較してガラス工具での摩擦係数が小さくなった.これは,ガラスとSKD61の弾性係数の違いが影響している.背圧が高いほど弾性係数が低いガラスは変形しやすくな(a) μ=0.5,T2=0.6 (b) μ=0.5,T2=0.9 エステル系潤滑剤(48cSt) 10 0.6(20[MPa]) 0.9(30[MPa]) 20 図14 接触圧力の解析結果 5.1 界面観察方法 図15に,界面観察の模式図を示す.図3に示した曲げすべり機構は工具を固定し,ガイドローラを上下動させて加工を行う.そこで,工具をガラス製にものにし,下からユニオン製長焦点レンズ(UWZ 2:作動距離 200 mm)とディテクト製の最大画素数が530万画素である高速度カメラ(HAS-U2)を使用して加工界面を観察する.また,本試験では潤滑剤の導入部分を観察したいため,カメラとレンズを約10°傾けて観察を行った. 5.2 ガラス工具の設計・製作 図16にガラス工具と治具を示す.試験片接触部をガラス製に変更し,穴の開いた治具にはめ込む形とした.ガラス工具はオハラ製のナノセラム(弾性係数E = 80.2 GPa)を使用した. 図15 界面観察の模式図 図16 ガラス工具と治具 5.3 試験方法 ガラス工具を用いて,3.1と同様の試験手順で試験を行った.試験片は同様に超々ジュラルミンA7075を使用したが,本試験では試験片が曲がった際に光が集中しないように,表面を600番の研磨紙で粗くした状態で試験を行った.試験条件は表2として以下に示す.また,本試験では工具の違いによる各荷重の変化や摩擦係数を比較するために,ガラス工具と同様の条件でSKD工具を用いての試験も行った. 表2 試験条件 引抜き速度[mm/s] 後方張力(背圧)[kN] 引抜き距離[mm] 潤滑剤 5.熱間曲げすべり加工界面の直接観察 5.4 結果と考察 (a)曲げすべり試験結果 図17に,各背圧の引抜き荷重とプレス荷重を示す.左図がT2 = 0.6 kN,右図がT2 = 0.9 kNの結果である.2条件ともにガラス工具の方がSKD工具よりも引抜き荷重とプレス荷重が低くなった.これは,ガラスとSKD61の熱伝達効率の違いが影響しており,熱伝達率の小さいガラス工具の場合,SKD工具よりも加工中の試験片温度が下がりづらいため,荷重が低くなったと考えられる. 図17 各背圧の引抜き荷重とプレス荷重 るため,扁平により曲率半径が増大し,焼付きが生じにくくなった結果,摩擦係数が減少したのではないかと考えられる. 図18 ガラスとSKD工具による摩擦係数の比較 (b) 界面観察による潤滑評価 試験中の加工界面を録画した動画から輝度値(256諧調)を測定し,輝度値の変化から潤滑剤の挙動を観察した.図19にT2 = 0.6 kN時の輝度値,図20に加工界面の様子を示す.3か所とも引抜き距離1.0 mm付近で潤滑剤の挙動を確認することができた.また,11 mm地点では測定点②と③で輝度値の低下が見られた.これは,付近に潤滑剤が溜まったことで膜厚が厚くなり,色が濃くなったからである.図17左図より,9 mm地点でガラス工具に加わる荷重が一時的に下がったのも,潤滑剤が工具と試験片の間に溜まったことによると考える. − 176 −

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