天田財団_助成研究成果報告書2024
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キーワード:熱間曲げすべり,摩擦係数,その場観察 3.試験方法 図2に従来の曲げすべり試験機の模式図,図3に本研究で開発した曲げすべり試験機の模式図を示す.曲げす被加⼯材 A7075 図1 熱間潤滑評価試験機 図3 開発した曲げすべり 試験機構2) 表1 試験片の寸法 厚さ ⻑さ 600 mm 2.0 mm 試験機構 板幅 15 mm 具への焼き付き,寿命の問題が多い.近年では,鋼やマグネシウム合金の熱間成形が広く用いられている.従って,高温状態での工具と材料のトライボロジー特性を評価する試験機の開発が必要とされている.今まで板成形に関しては,摺動特性の評価方法が多く提案されているが,熱間加工に適用した事例は少ない.海外では曲げすべり試験による研究報告はここ10年で15件程度あったが,すべて冷間加工であった.著者ら1)は,直接通電加熱を用いた熱間潤滑評価試験機を用いて,フランジ部を対象とした熱間平板引き抜き試験によって,材料の摺動速度や工具コーティングが熱間摩擦係数や焼付きに及ぼす影響の評価を行ってきた.しかし,焼付きなどが生じやすい熱間成形のダイ肩R部の摺動特性の評価および潤滑機構の検討はほとんど行われておらず,その評価方法の確立が必要とされている. 本研究では,曲げすべり試験機を設計・製作し,提案する機構で被加工材のダイ肩R部の摩擦係数の測定が可能であるかを検証する.試験では直接通電加熱電極を導入し,ダイ肩R部での熱間摺動特性の評価と熱間曲げすべり加工界面を直接観察し,潤滑剤の挙動の確認を目的とする. 2.試験装置及び試験材料 2.1 熱間潤滑評価試験機 図1に熱間潤滑評価試験機を示す.熱間潤滑評価試験機は最大加圧:20kN,最大引抜力:10kN,最大引抜速度:37mm/sである.背圧用アクチュエータは0.14kN~1.96kN出力できる空気圧シリンダを用いた.曲げすべり工具を,熱間潤滑評価試験機のダイセットに取り付けて、試験を行った.温度測定は,非接地型のK熱電対を用いて行った. 2.2 曲げすべり試験機 べり試験では,図2に示すように逆張力と張力を付与する装置の角度が可変もしくは90°の角度を成すのが一般的であるが,本研究では通電加熱電極を用いるため,図3に示すようにガイドローラを用いて装置を同一平面上1.諸言 塑性加工のトライボロジーは被加工材の表面精度や工東京電機大学 工学部 先端機械工学科 (2021年度 一般研究開発助成 AF-2021008-B2) 教授 柳田 明 に配置する.従って,従来の試験機では加熱された試験片をチャックし,即座に試験を行うことが困難であったが,この試験機を用いることで試験片の加熱と加工を同時に行うことが可能となる.工具の材質は,SKD61とした. 図2 従来の曲げすべり 2.3 試験材料 表1に試験片の寸法を示す.試験片には超々ジュラルミンA7075を用いた. 3.1 試験手順 ①通電加熱電極を用いて試験片を450℃まで加熱し,300sを保持し(簡易溶体化処理),②試験片と工具が設定した接触角になるようにプレスユニットの高さ制御を行っ− 173 −熱間曲げすべり変形中の工具界面のその場観察による 潤滑特性の評価

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