天田財団_助成研究成果報告書2024
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4.結び■■■謝■辞■参考文献■系が容易すべり系であるとの前提で初期値を設定した結果,図2~4に示したように応力-ひずみ挙動と格子ひずみ発達の双方で極端に外れた計算結果とはならなかった.しかしながら,各変更機構の相対的な活動度が全く未知な材料に対するパラメータ同定を想定した場合,初期値依存性は問題となり得る.ここでは,図4の結果を示すパラメータを最適値として,異なる初期値で得られた結果を比較することで初期値依存性について考察する. ■以下では■種類の異なる初期CRSSから最適化を実施した結果について説明する.初期CRSSはα-Mg相の■つの変形機構およびLPSO相の つの変形機構のうち■つのみを10 MPaとし,残りを100 MPaとした.すなわち,(i) α-Mg相の底面すべり系(α-Mg Basal),(ii) α-Mg相の柱面すべり系(α-Mg Prismatic),(iii) α-Mg相の錐面すべり系(α-Mg ),(iv) α-Mg相の双晶系(α-Mg Twin),(v) LPSO相の底面すべり系(LPSO Basal),(vi) LPSO相の柱面すべり系(LPSO相Prismatic)のいずれか■つが軟質と仮定した初期値でパラメータ同定を実施した. 表1は,異なる初期CRSSで得られた目的関数の最小値を図4で得られた最適値で除して正規化した値を示しており,小さい値ほど最適値に近いことを示している.表1の結果より,α-Mg相とLPSO相いずれかの底面すべり系初期CRSSを小さくした場合,より最適値に近い収束を示してる一方で,α-Mg相の非底面すべり系と双晶系の初期値を小さくすると最適値とは大きく離れた値で収束することがわかる.図4の解析結果は,α-Mg相とLPSO相のどちらの底面すべり系初期CRSSも小さくした場合を初期値としていることから,本節で実施したような初期値依存性の調査を予備解析として得られる結果に基づくことにより,パラメータの大域的最適化が実施可能である. 表1■パラメータ収束値の初期CRSS依存性 ■本稿では結晶塑性解析を実施する上で問題となる材料パラメータ同定の困難さを克服するための■手法として,その場回折により得られる格子ひずみ発達データと数理最適化手法を用いる方法を示した.特に最適化の目的関数としては,応力-ひずみ曲線に加えて格子ひずみ発達を考慮することがパラメータ同定に有用であることを最適化されたパラメータによる実験結果と解析結果の比較により明らかにした.また,パラメータ同定における初期値依存性についても示した後,初期値依存性に関する解析自体■が初期値を決める上で有用となり得ることが示唆された.今回のパラメータ同定には,負荷方向の回折から得られるデータのみを使用したが,その場回折実験からは半径方向の回折データや集合組織発達に関する情報も得られる.このような情報も総合的に考慮した最適化を実施し,より現実的な材料パラメータを効率的に同定することがこれからの課題である.■本研究は,公益財団法人天田財団の一般研究開発助成を受けて実施したものであることを付記して謝意を表します.また,本研究の実施と本稿の執筆に際して,日本原子力研究開発機構の諸岡聡氏,Stefanus Harjo氏,Wu Gong氏,および熊本大学大学院の修了生である高山隼太郎氏との共同研究で得られた実験結果と修士研究成果を使用させて頂きました.御礼を申し上げます.■1) D. Peirce, R. J. Asaro, and A. Needleman: Acta Metall. 31 (1983) 1951-1976. 2) F. Roters, P. Eisenlohr, L. Hantcherli, D. D. Tjahjanto, T. R. Bieler, and D. Raabe: Acta Mater. 58 (2010) 1152-1211. 3) R. A. Lebensohn: Acta Mater. 49 (2001) 2723-2737. 4) R. A. Lebensohn, A. K. Kanjarla, and P. Eisenlohr: Int. J. Plasticity 32 (2012) 59-69. 5) P. Eisenlohr, M. Diehl, R. A. Lebensohn, and F. Roters: Int. J. Plasticity 46 (2013) 37-53. 6) B. Clausen and T. Lorentzen: Metall. Mater. Trans. A 28 (1997) 2537-2541. 7) T. M. Holden, C. N. Tomé, and R. A. Holt: Metall. Mater. Trans. A 29 (1998) 2967-2973. 8) S. R. Agnew, C. N. Tomé, D. W. Brown, T. M. Holden, and S. C. Vogel: Scripta Mater. 48 (2003) 1003-1008. LPSO Prismatic 9) W. Gong, K. Aizawa, S. Harjo, R. Zheng, T. Kawasaki, J. Abe, T. Kamiyama, and N. Tsuji: Int. J. Plasticity 111 (2018) 288-306. 1.848 10) Y. Kawamura, K. Hayashi, A. Inoue, and T. Masumoto: Mater. Trans. 42 (2001) 1172-1176. 11) S. Yoshimoto, M. Yamasaki, and Y. Kawamura: Mater. Trans. 47 (2006) 959-965. 12) K. Shiraishi, T. Mayama, M. Yamasaki, and Y. Kawamura: Mater. Sci. Eng. A 672 (2016) 49-58. 13) K. Shiraishi, T. Mayama, M. Yamasaki, and Y. Kawamura: Mater. Sci. Eng. A 790 (2020) 139679. 14) T. Mayama, S. R. Agnew, K. Hagihara, K. Kamura, K. Shiraishi, M. Yamasaki, and Y. Kawamura: Int. J. Plasticity 154 (2022) 103294. α-Mg Basal 1.418 α-Mg α-Mg 3.659 Prismatic 3.671 α-Mg Twin 3.439 LPSO Basal 1.406 − 148 −
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