天田財団_助成研究成果報告書2024
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3.解析結果図1解析に考慮した変形機構. ・■格子ひずみの出力実験的に得られる格子ひずみは放射光や中性子線の回折を利用して得られる結晶学的面の間隔(d-space)の変化より得られる.一方,結晶塑性解析では,変形解析で得られる応力テンソルと弾性係数より算出される弾性ひずみテンソルから求められる,各結晶学的面の法線方向成分を局所的な格子ひずみと見做すことができるが,実験的に得られる格子ひずみと等価にするためには,検出器で測定される結晶粒の平均値とする必要がある.結晶塑性解析では各結晶の結晶方位に関する情報も保持しているため,結晶方位に基づき判定すれば良いが,実験で用いている検出器の配置を考慮して,理想的な配向からの偏差を許容することにより,実験と等価な格子ひずみとすることができる. ・■材料パラメータの最適化手法本研究では材料パラメータの最適化手法として,勾配法とGAを用いた.勾配法は初期値に依存して局所最適値に陥ることが問題として良く知られているが,本研究では純Mg単結晶や商用Mg合金多結晶材の結晶塑性解析に関する過去の知見に基づき各パラメータの大小関係を予め定めて最適化を実施したことにより,明らかな局所最適値への収束はみられなかった.GAについても様々な問題が指摘されており,それらを克服するための手法も各種提案されているが,本研究では最もシンプルな単純GAを用いることにした.また,両最適化で用いる目的関数は,応力-ひずみ曲線および各結晶学的面の格子ひずみ‐巨視的ひずみ関係の実験値と計算値の差の二乗和とし,必要に応じて重み付けすることにより,極端にどれか1つの関係が最適化に過度な影響を及ぼすことを回避した.重みの付け方には任意性があり,決定方法は大きな問題であるため,本稿では重み付けが同定精度に及ぼす影響について示し,さらに同定結果の初期CRSS依存性に関する結果も示す.なお,本稿では紙面の都合により勾配法により得られた結果のみを示す.■・■目的関数依存性ここでは同定結果に及ぼす目的関数依存性を示すため,(i)応力-ひずみ曲線のみをフィッティング対象とした場合(図2),(ii)格子ひずみ発達のみをフィッティング対象とした場合(図3),および(iii) 応力-ひずみ曲線と格子ひずみ発達の両方をフィッティング対象とした場合(図4)について,最適化されたパラメータを用いて実施した解析結果の応力-ひずみ挙動と格子ひずみ発達を示し,それぞれの特徴を比較する.図2応力-ひずみ曲線のみを目的関数としてパラメータ同定した結果.(a) 応力-ひずみ挙動.(b) α-Mg相および(c) LPSO相の格子ひずみ発達.図2に示した応力-ひずみ曲線のみをフィッティング対象とした場合,図2(a)の応力-ひずみ曲線は実験と計算がほぼ完全に一致しているが,格子ひずみ発達については実験と計算の差が大きく,特に図2(b)に示したα-Mg相の{1011}面格子ひずみは実験と計算で大きく異なる発達− 146 −

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