5.結言 本報告では,任意断面形状への加工の第1ステップとし 謝 辞 参考文献 る回転方向送りfrとねじれβの関係を示す.これまでの知見9)どおり,Pass-IFevenとPass-IFoddのβはfrが大きくなるに従い大きくなった.また,Pass-RFeven,Pass-RFoddにおいても同様に,βはfrが大きくなるに従い大きくなり,その値はPass-IFeven,Pass-IFoddの半分程度であった. ラジアルフォージングを模した2つの加工パスPass-RFeven,Pass-RFoddいずれも縮径が可能であり,ねじりβを低減することができたことから,成形性の観点では比較的有効な加工パスといえる.一方で,逐次鍛造の提案パスであるPass-IFoddの方が最大外径比DOmax/DOini,最小外径比DOmin/DOiniともに,幾何学的に求まる最小外径比に近かったことから,より実用的な加工パスであると考える. 4・3 8角形から16角形に加圧する加工パスと初期内外径比と圧下率の影響 図12に自由鍛造で一般的に用いられる8角形から16角形に加圧する加工パスPass-OH,逐次鍛造の従来パスであるPass-IFeven,逐次鍛造の提案パスであるPass-IFoddにおける初期内外径比DIini/DOiniと圧下率Rが成形形状に及ぼす影響を示す.図12(a)の最大外径比DOmax/DOiniについて,Pass-OHでは1より小さく,Pass-IFoddと同様に縮径ができた.また,Pass-OHとPass-IFoddではRが大きくなるに従い,DOmax/DOiniが小さくなり,DIini/DOiniが小さくなるに従い,DOmax/DOiniが小さくなった.Pass-IFevenではDOmax/DOiniが1より大きく偏平化のため縮径されておらず,Rが大きくなるに従いDOmax/DOiniが大きくなり,また,DIini/DOiniが大きくなるに従いDOmax/DOiniが大きくなった.図12(b)の最大内径比DImax/DOiniについては,それぞれのDIini/DOiniを基準としてDOmax/DOiniと同様の傾向となった. 図12(c)のねじれβについて,自由鍛造で一般的に用いられる8角形から16角形に加圧する加工パスPass-OHでは,ほとんどねじれが生じず,逐次鍛造の提案パスであるPass-IFoddより小さかった.また,加工パスによらず圧下率Rが大きくなるに従い,βが大きくなる傾向となった. 自由鍛造で一般的に用いられる8角形から16角形に加圧する加工パスPass-OHは,逐次鍛造の提案パスであるPass-IFoddと同程度に縮径することができることに加え,ねじれβがほとんど生じないことから,成形性の観点で有効な加工パスといえる.一方で,仮想的な成形形状である仮定正n角形の選択の自由度が低いため,実加工への適用に際しては,Pass-IFoddを基本とし,必要に応じて限定的にPass-OHを用いることが望ましいと考える. て,横断面の偏平化抑制を目的とし,いくつかの特徴的な加工パスや種々の加工条件が成形形状に及ぼす影響について検討した結果についてまとめた.得られた結果を以下に示す. (1)ラジアルフォージングを模した加工パスはいずれも縮 径が可能であり,成形性の観点では比較的有効な加工パスであるが,幾何学的に求まる最小外径比に近い成形形状とすることができる逐次鍛造の提案パスの方がより実用的である. (2)自由鍛造で一般的に用いられる8角形から16角形に加圧する加工パスは,逐次鍛造の提案パスと同程度に縮径できるとともに,ねじりも生じないことから成形性の観点で有効な加工パスといえる.ただし,自由鍛造で一般的に用いられる8角形から16角形に加圧する加工パスは,仮想的な成形形状である仮定正n角形の選択の自由度が低いため,実加工への適用に際しては,逐次鍛造の提案パスを基本とし,必要に応じて限定的に用いることが望ましい. (3)回転方向送りで定まる仮定正n角形の辺の数が大きくなるに従い,ラジアルフォージングを模した加工パスと逐次鍛造の提案パスでは,最大外径比,最小外径比ともに幾何学的に求まる最小外径比に近づく. (4)圧下率が大きくなるに従い,自由鍛造で一般的に用いられる8角形から16角形に加圧する加工パスと逐次鍛造の提案パスでは,最大外径比,最大内径比ともに小さくなる. (5)初期内外径比が小さくなるに従い,自由鍛造で一般的に用いられる8角形から16角形に加圧する加工パスと逐次鍛造の提案パスでは,最大外径比,最大内径比ともに小さくなる. 本研究は公益財団法人天田財団の一般研究開発助成(AF-2020025-B3)により行われたものです.ここに深く感謝の意を表します. 1) Covill, D. & Drouet, J. M.: Proc. 12th Conf. Int. Sports Eng. Assoc., 2-6 (2018), 216. 2) Raedt, H. W., Wurm, T. & Busse, A.: ATZ worldw., 121 (2019), 54-59. 3)Rauschnabel, E & Schmidt, V.: J. Mater. Process. Technol., 35 (1992), 371-383. 4)Kim, S. W., Kwon, Y. N., Lee, Y. S. & Lee, J. H.: J. Mater. Process. Technol., 187-188 (2007), 182-186. 5)Romanenko, V. P., Stepanov, P. P. & Kriskovich, S. M.: Metall., 61 (2018), 873-877. 6)Wenfei, P., Shuhua, Z., Yijui, C., Xuedao, S. & Lihua, Z.: Rare Met. Mater. Eng., 45-4 (2016), 836-842. 7)Wallnera, S., Harrera, O., Buchmayra, B. & Hoferb, F.: AIP Conf. Proc., 1315-1 (2010), 315-320. 8)牧山高大・村田眞・久保木孝:塑性と加工,45-524 (2004),737-741. 9)牧山高大:塑性と加工,62-727 (2021),97-102. − 144 −
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