2・2 構成相および微細組織 得られた焼結体の構成相はX線回折装置 (SmartLab, リガク) を用いて,管電圧40 kV,管電流40 mAの条件下で,Kβフィルター法により測定を行った.粉末回折データベース (ICDD PDF-2) を用いて,構成相の同定を行った.また,微細組織および元素分析についてはFE-SEM/EDS (FE-SEM; JSM7800F, 日本電子,EDS; Octane Elect Super, Ametex EDAX) を用いて観察,評価を行った.結晶粒径は,電子線後方散乱回折法 (EBSD; Digi View 5, Ametex EDAX -TSL) を用いて評価した. 2・3 熱分析および粒度分布測定 熱重量測定 (TG) と示差熱分析 (DTA) の同時測定装置 (STA2500, Netzsch) を用いて,Ar雰囲気中で測定を行った.また,出発原料の粒度分布は,レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置 (LA-920, 堀場製作所) を用いて,湿式法 (分散媒:水) により測定を行った. 2・4 熱電特性,輸送特性評価 電気抵抗率,ゼーベック係数は,熱電特性評価装置(ZEM-1S, アルバック理工) を用いて,低圧ヘリウム雰囲気下,室温~773 Kの温度領域で測定を行った.熱伝導率は,密度,レーザーフラッシュ法により測定した熱拡散率 (LFA457, Netzsch),DSC法により測定した比熱 (STA449F3, Netzsch) から算出した.また,ホール定数測定システム(ResiTest8320, 東陽テクニカ) を用いて,室温におけるキャリア濃度と移動度などの輸送特性の評価を行った. 3.実験成果 3・1 通電塑性加工によるMg3Sb2の合成プロセス MgとSbの化学反応挙動を調べるために,Ar雰囲気下においてTG/DTA測定(図2)を行った.MgとBiの反応挙動と比較する.式(1), (2)の化学反応により,MgとSbおよびMgとBiからMg3Sb2,Mg3Bi2が生成する. 図2 Mg-SbおよびMg-Bi系の熱分析 (TG/DTA) 3 Mg + 2 Sb → Mg3Sb2 (1) 3 Mg + 2 Bi → Mg3Bi2 (2) Mg-Sb系およびMg-Bi系の原料間の反応に伴うブロードな発熱ピークが観測され,その開始温度は,それぞれ770 K,820 Kであり,Mg-Sb系の方がMg-Bi系よりも反応開始温度が低い.Mg-Bi系では,Biの融解に伴う吸熱ピークがBiの融点である544 K付近で認められた.Mg-Sb系では,Mg,Sbの融解に伴う吸熱ピークは認められず,900 K以上の温度域においては,MgとSbは殆ど残存しておらず,Mg3Sb2の生成反応が終了した結果と考えられる. Mg3Sb2の化学量論組成よりもMgを僅かに過剰としたMgとSbの混合粉末をカーボン製ダイに充填し,Ar雰囲気中,40 MPaの一軸加圧の下,通電加圧焼結装置を用いて,一定温度下で15分間加工し,MgとSbの反応,密度,微細組織を検討した.X線回折測定(図3)および走査型電子顕微鏡観察(図4)の結果,573 Kで加工した際には,未反応のMg相 (ICDD PDF #00-035-0821) とSb相 (ICDD PDF #01-085-1322) から主に構成されており,Mg3Sb2相 (α-Mg3Sb2, ICDD PDF #01-071-0404) は僅かにしか生成していなかった.673 Kにおいては,主成分としてMg3Sb2が生成し,化学量論組成よりも過剰のMgと僅かなSbが残存した.723 Kでは,Sb相は消失し,Mg3Sb2とMgの2相から構成されていることが明らかとなった.Mg3Sb2相が主成分となる673 K の加工条件は,TG/DTAにおけるMg-Sbの反応発熱ピークの開始温度770 Kよりも約100 K低温であり,通電加圧プロセスを用いることで, 加圧下,Mg-Sb間の反応が促進されることが明らかとなった. 図3 通電加工後のMg-Sb焼結体のX線回折図形 (Ar雰囲気,保持時間15分間) − 136 −
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