1.研究の目的と背景2.実験方法キーワード:押出加工,サーボプレス,高純度Mg-Zn合金,耐食性近年,マグネシウム合金は軽量,リサイクル性等の優れた特性により,携帯用電子機器をはじめ,自動車用途への展開も始まり,構造用材料の需要は増加傾向であり,高純度マグネシウムは医療材料等への適用の検討が行われている1~3).押出加工法は,通常,溶解・鋳造法で作製された円柱状ビレットを原料に行われるが,マグネシウムの押出加工においては,切削切粉の溶解鋳造していない原料をビレットによる押出加工の検討が盛んに行なわれており,本研究室でも真空蒸留法で得られた多孔質な高純度マグネシウム凝縮物のまま押出加工を行い,清浄な押出材を作製し,特性の検討を行ってきた4,5).また,サ-ボプレスによる押出加工の研究例はほとんどなく,本研究室では,天田財団平成29年度一般研究開発助成「サーボプレスを用いた押出加工・圧延加工による超高純度マグネシウム板材の作製」において検討し,押出温度375℃,押出比R9~13のサーボプレスによる押出加工を行い,圧延温度75℃~400℃の圧延加工により超高純度マグネシウム板材を作製できることを確認した6).しかしながら,引張強さは最大でも175MPa程で,生体内に使用するには薄肉化が必要で,強度の向上が必要である.そこで本研究では,サーボプレスを用いた押出加工による高強度・高耐食性Mg-Zn合金板材の作製について検討した.図1に真空蒸留措置の概略を示す。真空蒸留は原料AZ91マグネシウム合金(Mg-9.06%Al-0.68%Zn)300gを用い,SUS430ステンレス鋼製るつぼ内に挿入し,コンデンサ(回収部)および蓋をるつぼ上にのせ,密閉後,油回転真空ポンプで1Pa未満まで真空排気し,原料温度620℃,回収温度350℃に昇温し,8h温度保持した.コンデンサはφ45mm,深さ40mmの穴が4個ある構造で,本実験条件では,1回の真空蒸留試験でφ45mm, 高さ25mm程のマグネシウム凝縮物が4個回収できた.式(1)から蒸発率(%)および式(2)から回収率(%)を求めた.富山高等専門学校機械システム工学科(2020年度一般研究開発助成AF-2020022-B3)教授井上誠ここでW₀は蒸留前のマグネシウム重量(g),Wは蒸留後の原料重量(g),C₀は試験前のコンデンサ重量(g),Cは試験後のコンデンサ重量(g)である.また,Zn量を増やすために,純度99.99%以上,粒径Φ3mm~6mmのZn粒を用い,Zn量の増加を検討した.押出加工にはコンデンサで得られたマグネシウム凝縮物3個1セットを押出ビレットとした.図2に押出加工機の外観を示す.最大荷重800kNのサーボ駆動プレスの縦型の押出加工機を使用した.図3に押出加工機の押出部の概略を示す.真空蒸留で得られたφ45mmの押出ビレットをコンテナ内に入れ,ビレット上にダミーブロックを置き,375℃まで加熱後,1h保持し,パンチを通じて上部から荷重をかけ,ビレット下部のダイスを通じて押出材を作製した。モーションは振り子モーションを用いた.ダイスは幅30mmで,厚さ6mm(押出比R9),厚さ7mm(押出比R8)および厚さ8mm(押出比R7)の3種類を用いた.蒸発率(%)=100(W₀−W)/W₀・・(1)回収率(%)=100(C-C₀)/W₀・・(2)図1真空蒸留装置の概略− 131 −サーボプレスを用いた押出加工による高強度・高耐食性Mg-Zn合金板材の作製
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