謝 辞 参考文献 (a) Ni-A5052 (b) Sn-A5052 図10 継手断面における元素分析結果 違いである思われる.これは大きな融点差があることにより,軟化温度にも大きな差が生じるためであると考えられる.また,熱伝導性の差も影響をおよぼしていると考えられる(Al: 239W/m・K, Ni: 88W/m・K, Sn: 65W/m・K)5).すなわち,高融点材料であるNiめっきがアルミニウム合金の表面にあることで,表面被覆の無いアルミニウム合金の場合と比較して,発生した摩擦熱はアルミニウム合金側へ伝わり難くなり,ツール側により伝わる.さらに摩擦熱がアルミニウム合金側に伝わると,アルミニウム合金より高融点であるNiめっきはあまり軟化せず,めっき層直下のアルミニウム合金が先に軟化し,バリとして排出され,これによりNiめっきも排出される.バリ排出時には高温のバリが排出されることによって,接合温度上昇が抑制されると考えられる.一方,低融点材料であるSnめっきがアルミニウム合金の表面にあることで,発生した摩擦熱は早々にSnめっきを軟化させ,バリとして排出させる.バリの排出により接合温度上昇が抑制され,ツール温度およびアルミニウム合金の接合温度が低く抑えられると考えられる.バリの流出挙動が明確ではないなど,現状では未解明の部分もあるが,このような機構により,接合材料と大きな融点差がある表面被覆材料があることで,接合温度低減効果があると考えられる.また,このような機構は,通常,接合温度分布が存在するFSWの高温側となるASに,表面被覆された材料を配置するだけでも,十分に接合温度低減効果があると考えられる. 4.結論 FSW中の接合温度制御方法の可能性を検討するため,接合材料よりも低融点および高融点の材料の表面被覆した接合材料を用い,接合材料を様々に配置した場合のFSW時における温度測定を行うことにより,本温度制御方法の特徴を明らかにした結果,以下の結論を得た. (1)NiおよびSnめっきを施したアルミニウム合金のFSWにおいて,めっきのない材料と比較して,接合温度は場合により100K以上低下する. (2)NiおよびSnめっきを施したアルミニウム合金を,AS部分にだけに選択配置したFSWにおいて,接合温度低減効果がより大きくなった. (3)SnめっきとNiめっきとでは,Niめっきの接合温度低減効果がより大きくなっていた. (4)FSW後,めっき材はビード表面においてはわずかに残留するだけであり,継手内部への混入はなく,継手性能に影響をおよぼすことはほぼないものと考えられる. 本研究は,公益財団法人天田財団からの一般研究助成(AF-2020021-B3)により実施した研究に基づいていることを付記するとともに,同財団に感謝いたします. 1)岡村 久宣,青田 欣也,坂本 征彦,舟生 征夫:溶接学会全国大会講演概要, 66(2000),204. 2)三浦 拓也, 上路 林太郎, 藤井 英俊:溶接学会論文集, 33-4(2015), 358. 3)三浦 拓也, 森貞 好昭, 潮田 浩作, 藤井 英俊:溶接学会全国大会講演概要, 112(2023), 80. 4)藤井 英俊,中田 一博:レーザ加工学会誌,16-3(2009),171. 5)日本金属学会:金属データブック,(1974),12,丸善.− 130 −
元のページ ../index.html#132