天田財団_助成研究成果報告書2024
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た場合のツール表面温度を測定した結果を示したものである.接合温度測定結果とは異なり,ツール表面温度は,A5052単独の場合やSnめっき材を用いた場合に低下し,一部にでもNiめっき材を用いた場合がこれらと比較として高くなっており,場合によっては200K程度の差があった.また,一部にSnめっき材を用いた場合を除いて,ツール表面温度はいずれの配置においても接合速度によらずほぼ一定となった.これらのことから,概ねツール表面温度が高くなると接合温度は低下し,逆にツール表面温度が低くなると接合温度は上昇するような傾向を示した. 3・4 継手断面観察結果 図8は,アルミニウム合金を様々に配置してFSWを行って得られた継手の断面組織観察結果を示したものである.ここでは接合速度100m/minの場合について示したが,A5052単独の場合を除いて,めっき材を用いた場合はいずれも溝状およびトンネル状の欠陥が観察された.このような欠陥の大小は,概ね接合温度測定結果と一致し,低温傾向にあるものの欠陥が増大した.このことから,欠陥の主(b) Ni-A5052 (c) Sn-A5052 (d) A5052 + Ni-A5052 (e) A5052 + Sn-A5052 図8 FSW継手の断面観察結果 (a) A5052 要因は入熱不足であり,めっき材の使用が十分な冷却効果をもたらしていることが示唆される.なお,ここでは省略したが,接合速度が増加すると,いずれの材料を用いた場合も欠陥の数や大きさが増大した. 3・5 めっき材の元素分析結果 図9は,めっきしたアルミニウム合金板に,FSWを行った場合の継手ビード表面における元素分析結果を示したものである.なお,ここでは接合速度100mm/minの場合におけるツールの回転中心について示した.分析面の観察結果より,Ni-A5052およびSn-A5052ともに観察上ではめっきの残留はほとんどなかった.しかしながら,NiおよびSnの面分析結果から,ところどころにNiおよびSnが検出された.これらのことから,めっき材はほぼ剥離し,バリとしてツールショルダ直下から排出されたと考えられる.また,わずかに残存しためっき材は,アルミニウム合金表面に擦り付けられたようになっており,継手特性に影響を与えるとは考えられない. 図10は,めっきしたアルミニウム合金板に,FSWを行った場合の継手断面における元素分析結果を示したものである.なお,ここでも接合速度100mm/minの場合における,ツール回転中心の表面から約1mm内部について示した.結果から,Ni-A5052およびSn-A5052ともにNiおよびSnのピークは検出されなかった.このことから,めっき材の継手内部への混入はなかったものと考えられる. 3・6 表面被覆による温度制御 これまでにめっき材を用いることで,FSW中の接合温度が低下することが明らかとなった.それでも,めっき材の違いにより,接合温度にも違いがあった.そのため,めっき材を用いた際の接合温度低下機構について考察する. まず,NiとSnめっきの違いは,母材のアルミニウム合金と比較して高融点材料であるか低融点材料であるかの 図9 継手ビード表面における元素分析結果 (a) Ni-A5052 (b) Sn-A5052 − 129 −

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