4.結び参考文献による接合においてどのような結合が生じているのかをX線光電子分光装置(XPS)を用いて調べた.表面にブラスト加工を施した試料を電磁接合し,界面を含む試料の断面を研磨し分析を行った.なお,研磨による汚れを除去するため,測定前にArイオンを用いたスパッタリングを行った.図15にはTi-CFRP接合材の接合界面のTi面側のC1s, O1s, N1s, Ti2pに関するXPSスペクトルを示す.測定箇所は接合界面から0.5mm, 0.2mm, 0.1mm離れた3点で測定を行った.この結果からC1sでは,界面近傍に近づくにつれ炭素繊維のC-C,樹脂由来のC=O,O=C-O基などのピークが存在している.またN1sでは,界面に近づくにつれ,CFRP由来のアミド基が大きくなっている.Ti2pでは,TiO2の大きなピークが確認される.また界面付近では今まで測定されなかったTiOのピークが確認される.図15 充電圧4kVで電磁成形により接合したTi-CFRP接合材の接合界面でのTi面側のXPSスペクトル図16充電圧4kVで電磁成形により接合したTi-CFRP接合材のCFRP面側のXPSスペクトル次にCFRP側について同様に分析を行った.界面から0.5 mm,0.2 mm,0.1 mm離れたTi-CFRP接合界面のCFRP面側のC1s,O1s,N1s,Ti2pに関するXPSスペクトルを図16に示す.C1sでは,界面から離れてた場所では,炭素繊維のC-C,樹脂由来のC=O,O=C-O基などのピークが存在している.しかし界面近傍に行くとピーク強度がかなり小さくなる.O1sでは,界面から離れてた場所は,樹脂由来のC=O,O=C-O基などのピークが存在している.一方,界面に近づくにつれ,TiO2の大きなピークが見られた.Ti2pでは,界面から離れた場所では全くピークがないのに対し,界面近傍ではTiO2の大きなピークが確認された.また界面付近では今まで測定されなかったTiOのピークが確認され,Ti面側と同じようなスペクトルとなる.以上の結果から,ブラスト加工のTi-CFRPは界面近傍でTiO2またはTiOを介して接合されているということが分かった.またTi面側ではN1sでCFRP由来のアミド基に関する大きなピーク強度が得られている.したがって,CFRP由来のアミド(-CONH)基とTi由来のTi-Oの酸化物により,界面に水素結合が生成され,これが強度上昇に影響を与えている.本研究では輸送機器のマルチマテリアル化に対応するため,電磁成形を用いたCFRPと金属の異種材接合加工を行った.有限要素法を用いた加工条件の最適化を行い,その結果を反映させて,電磁成形装置を用いて純チタン,チタン合金,ステンレス鋼,ニッケル合金,高張力鋼材に電磁エネルギーを加えることでCFRPとの接合が可能となった.また,ステンレス鋼では接合強度が12MPaを超え十分に実用に耐えれる性能を得ることができた.しかしながら,接合面における温度の均一性に欠けるため,今後はコイル形状の最適化が必要であり,接合に適したコイルの開発を行う予定である. 謝辞本研究の一部は公益財団法人天田財団の2020年度一般研究開発助成(AF-2020020-B3)の支援によって実施された.電磁成形実験および力学特性評価は名越貴志博士,中田暁人氏,解析は中住昭吾博士の協力のもと実施した.XPS分析は,大阪産業技術研究所および福島県ハイテクプラザにて実施した.1)西口公之他:新版接合技術総論, (1994), 美巧社2)鈴木秀男他:塑性と加工, 25-283(1984), 694.3)津𠮷𠮷𠮷𠮷恒武他:神戸製鋼技報,59-2 (2009),17.4)原田祥久,松崎邦男,中田暁人,野村悠:チタン,69-1 (2021).5)Feng, Z., Ma, G. and Su, J.: Journal of Manufacturing Processes, 64 (2021), 1493.− 125 −
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