天田財団_助成研究成果報告書2024
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較そこでマイクロフォーカスX線CTによりCFRP側の内部観察を行った.図11にはTi-CFRPおよびTi6Al4V-CFRPにブラスト加工を行い,充電圧3~7kVで電磁成形による接合を行った試料のX線透過像を示す.この結果から,充電圧が大きくなるにつれてCFRPの内部損傷も大きくなっていることがわかる.Tiでは4kVから,Ti6Al4Vでは5kVから損傷が進む.内部損傷が生じる原因としては, 電磁成形時にCFRPの樹脂が融解温度を超え,空隙を形成すると予測される.また,図10に示したように引張せん断強度の最大値は、両金属とともに充電圧が4kVのときであるが,XCT観察の結果から,Tiでは充電圧が3~4kV,Ti6Al4Vでは4~5kVの間に最適な条件があることが考えられる.3・3電磁成形による接合実験(各種金属との接合)SUS304, C276, HT590とCFRPについて,電磁成形による接合を行い,引張試験を行った.図12には接合面にブラスト加工を施したSUS304, C276, HT590-CFRPについて,電磁成形により接合した試験片を用いて引張試験により得られた引張せん断強度と充電圧の関係を示す.これらの結果から,SUS304では充電圧が4kVのとき約12.8MPa, C276では5kVのとき約11.7MPaとなり,TiやTi6Al4Vよりも大幅な強度向上が見られる.一方,SUS304に物性値が近い高張力鋼HT590では,約8MPaと他の金属に比べて若干小さな値となる.この要因については接合破面を比較することでわかる.図13にはSUS304, C276, HT590-CFRP接合材の接合破面を比較した写真を示す.HT590の場合,同じ充電圧でもSUS304やC276よりもCFRPの付着が少ないように見える.したがって,接合面での温度がCFRPの樹脂の融解温度まで上昇していない可能性が考えられる.HT590の組成には銅(Cu)が0.3%程度含まれる.そのため他の金属よりも,電磁成形時に使用している銅板コイルとの相性がよく,接合を行うとHT590板と接している部分で銅板コイルと接合されてしまうことがあった.すなわち,実際の実験では解析結果よりも強い電磁力が生じるため接合面で温度上昇していないと考えられる.図12 充電圧3~7kVで電磁成形による接合を行ったSUS304, C276, HT590-CFRP接合材の引張せん断強度の比図13 充電圧4~6kVで電磁成形により接合したSUS304, C276, HT590-CFRP接合材の引張破壊後の接合破面観察表面加工なしとブラスト加工を施したSUS304とCFRPを電磁成形による接合を行った接合材の疲労試験を実施した.加工条件はどちらの試料とも接合強度が最も高い値である充電圧4kVを用いた.疲労条件は,室温にて周波数5Hz, 応力比0.1の引張疲労にて行った.図14には横軸が破断したときの疲労回数,縦軸が最大応力のS-N線図を示す.この結果から,どちらの試料も最大応力が小さくなるにしたがって,繰り返し数も増加する典型的な疲労曲線を示す.ブラスト加工を施した試料は,加工なしの試料よりも疲労強度が大きく,同程度の応力負荷の条件で比較すると103回ほど違うことがわかる.以上の結果から,SUS304-CFRP接合材において,接合面にブラスト加工を施すことによって接合した場合には大幅な疲労寿命の増加が見込めることがわかった.図14接合面に表面加工なしあるいはブラスト加工を施し電磁成形により接合したSUS304-CFRP接合材の疲労特性評価3・4接合界面の表面分析CFRPと金属の異種材の直接接合では,CFRP樹脂の極性官能基と金属表面の酸化物が静電相互作用による分子間力を発生させているという報告がある5).そこで電磁成形− 124 −

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