天田財団_助成研究成果報告書2024
122/508

1.研究の目的と背景キーワード:電磁成形,異種材,接合我が国は,内閣府「エネルギー・環境イノベーション戦略」において,数十から百億トンの温室効果ガス削減を目指しており,目標として、自動車重量の半減が掲げられている.そのためには構造材を適材適所に用いるマルチマテリアル化の実現が必要不可欠である.特に,炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は,軽量かつ高強度を有することから軽量化のキーマテリアルであり、車体骨格構造のCFRPと金属の異種材の新しい接合加工技術の開発が期待されている.従来,接合技術には,「溶融接合」,「固相接合」,「機械的接合」,「接着接合」などがある1).CFRPと金属の異種材接合技術では航空機用途においてリベット等の「機械的接合」と「接着接合」が併用されている.また,熱可塑性樹脂を用いたCFRPでは,レーザー等の加熱による「溶融接合」,超音波やホットスタンプ(熱間プレス)のように塑性変形を利用した「固相接合」が研究されている.これらの手法はメリットがある反面,デメリットが存在する.例えば,「機械的接合」ではリベット等の円孔部周辺の応力集中による強度低下および重量増加,「接着接合」では有機等を使用するため環境への負荷や大幅な工程時間増がある.「溶融接合」ではCFRPの樹脂層の劣化による強度低下や寿命低下がある.「固相接合」では加工速度が速いが,超音波では接合面積が限られること,ホットスタンプではスプリングバックや金型寿命等の問題がある.上記接合加工以外に,電磁成形を利用した異種材接合加工がある.電磁成形法は磁界のエネルギーを瞬時に被加工物に加えることによって塑性変形させる方法である2).この成形によって,大幅な工程時間の短縮,成形性の向上が可能となり,自動車部品ではアルミニウム合金のバンパーステイの成形に一部用いられている3).この方法を接合加工に応用し,電気抵抗の大きい金属を用いると、金属に発生する熱と電磁力を利用することができ、熱可塑性樹脂CFRPと金属の異種材接合が可能となる4).現在,自動車部品では鉄鋼材料からアルミニウム,CFRPなどの軽金属や複合材などのマルチマテリアル化が進んでおり,今後さらなる軽量化のためには,これらの材料に対する需要はますます増加するとともに,CFRPや金属などの接合が必須となる.そこで本研究では,輸送機器のマルチマテリアル化に対応するために,電磁成形を用いた炭素繊維強化プラスチック(CFRP)と金属の異種材の超高速国立研究開発法人産業技術総合研究所製造技術研究部門(2020年度一般研究開発助成AF-2020020-B3)原田祥久2.研究方法かつ高信頼性を有する接合加工技術の開発について述べる.2・1電磁成形による接合実験本研究で使用した電磁成形装置の外観を図1に示す.装置は図2に示すように容量33.4μFのコンデンサを12個,並列あるいは直列に接続することで容量を33~401μFまで変化させることができる.コンデンサの充電圧は200Vの電源を用いて,昇圧トランスにより15kVまで印可が可能である.充電エネルギーEは次式にて表される. ここで,Cはコンデンサ容量,Vは充電圧であり,本装置では最大45kJのエネルギーを加工に用いることができる.図3には電磁成形による接合加工に用いた平板スパイラルを示す.コイルの外径は100mm,内径は14mm,ピッチは4mmである.ガラステープにより絶縁された15×2mmの矩形断面を持つ銅線を渦巻き状に巻き、コイル導体と同じ穴を持つガラス繊維強化プラスチック(GFRP)の厚板に挿入し,電気絶縁と強度化を施している.インダクタンスおよび抵抗は,それぞれ4.4μHおよび1.1mΩである.図4には電磁成形による接合法の概略を示す.平板コイルの上に矩形の銅板を設置して,接合に用いる金属板を銅板にブリッジさせてワンターンコイルを形成させ抵抗加熱を行った.銅板に流れる電流の計測を行ったところ,コイルに6.6kA流した場合には銅板には32kAが流れたこと 図1電磁成形装置の外観 (1)− 120 −電磁成形を用いた異種材マルチマテリアル接合加工技術の開発E=12𝐶𝐶𝐶𝐶𝐶𝐶𝐶𝐶2

元のページ  ../index.html#122

このブックを見る