図1実験装置の外観4~6)1.研究の目的と背景2.実験方法4~6)キーワード:ピーン成形,ショットピーニング,残留応力,粒子画像流速測定ショットピーニングは金属表面に鋼球を衝突させて,表面近傍に塑性ひずみを発生させることで圧縮応力を付与して,疲労強度を向上する技術である.ピーン成形とはショットを金属表面に打ち付けることにより表面近傍に発生する塑性ひずみを利用して,板を成形する技術である.航空機外板では板が非常に大きいこと,曲率半径が数m~数十m で複雑に分布することから,ダイレス成形であるピーン成形が適用されている1, 2).ショットピーニングでは,アルメンストリップと称する鋼片の表面にピーニングし,その変形量(アークハイト)でピーニング強度として,管理する場合が多い.アークハイトはアルメンゲージと呼ばれる専用の治具で計測する3).空気式ショットピーニングでは主な施工条件は,ショット速度,ショット材質,ショット径,投射角度,カバレージなどである.ショット速度は空気圧で制御する.カバレージは圧痕の面積と表面積の比で,通常はピーニング時間で管理する.ショット速度はショットの運動エネルギーを決める重要な因子であるが,計測することが難しく,過去の計測結果はピンポイントで測定した結果のみであり残留応力とショット速度・ショット径の関係を明らかにした研究はほとんどない.本研究ではショット速度の計測に高速ビデオカメラと粒子画像流速測定(Particle Image Velocimetry: PIV)を適用し,ノズルから供試体までの広い領域でショット速度の変化を計測し,空気圧・ショット外径のショット速度,残留応力分布,および変形量(アルメンストリップのアークハイト)と関係を明らかにした.また,ピーン成形の数値シミュレーション手法についても検討した.実験では図1に示す吸引式ショットピーニング装置を用いた.ノズルの穴径は4mmである.垂直にスタンドオフ距離100 mmでショットピーニングを実施した.ショットはジルコンで比重は3.85,硬度は650~800 HVである.直径の異なる3種類を使用し平均直径Dはそれぞれ#20が0.725 mm,#40が0.338 mm,#100が0.152 mmである.投射のエア圧pは0.20 MPaから0.60 MPaの範囲で行った.試験片はアルミニウム合金A5052-H34とアルメンストリップである.試験片はホルダに固定し,速度2.4mm/sで移動させ,1~16回施工した.ピーニング時間は施工回数広島工業大学機械システム工学科( ■ ■年度一般研究開発助成■■■ ■ ■■■■■■■)教授太田高裕3.実験結果と考察4~6)/移動速度で評価した.試験片全体にショットが当たるように90mm移動させた.アルメンストリップはN片(ばね鋼,6 mm×19 mm×0.8mm)を用いた.アルメンゲージ(JIS B 2711準拠)を用いて試験片のアークハイトを計測した.アルミニウム合金の寸法は縦19 mm×横76 mm×厚さ5 mm,硬度は43 HVである.ショットピーニングを行った後,アルミニウム合金の試験片の残留応力をX線回折法のcos α法を用いたパルスティック社のμ -360sで計測した.板厚内の残留応力は直径8 mmの範囲を表面から電解研磨して,研磨した表面で応力を計測した.高速カメラとPIVを用いて,ショット速度を直接計測した.ショット速度の計測では試験片を設置しなかった.高速度カメラはナックイメージテクノロジー社のMEMRECAM ACS-1を用いた.シャッター速度は1/250,000秒,フレーム速度は50,000 fpsである.解像度は1028 ×720ピクセルでノズルから約120 mmの範囲を撮影した.PIVはフローテック・リサーチ社のFtrPIVを用いた.移動量の推定には粒子追跡法を用いた.検査窓は24×24ピクセルである.234ペアの画像解析を行い,中央値を用いてショット速度を求めた.■■■ショット速度の計測結果4■5)ショットの撮影画像を図2に示す.代表例として#20と#100の空気圧が0.4 MPaの場合である.ノズルから投射後,ショットは広がりながら飛行している.#20に比べて,#100ではショットの個数が多く,ショットの拡がりが大きい.#20と#100についてPIVで求めたノズル中心線でのショット速度の変化を図3に示す.ショットはノズルから投射後に高圧空気により加速され,急激に速度を増加させ,定常速度に達する.スタンドオフ距離100 mmではショッ− 114 −ピーン成形におけるショット速度の計測と変形形状の制御
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