天田財団_助成研究成果報告書2024
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1.研究の目的と背景キーワード:摩擦,マグネシウム,成形性プレス加工は塑性加工の代表的な技法として古くから利用されている.この技法は製品を少ない工程で大量に生産できるため,生産性が高く金型を変えることでせん断加工や曲げ加工など複数の形状に加工ができる.この加工法の一つに深絞り加工がある.金属薄板であるブランクをダイと呼ばれる金型に設置し,パンチを用いて所定の荷重を負荷することで継ぎ目のない立体的な容器に成形する技術である.プレス加工の中において厳しい加工法として知られているが,大量生産に向いている.工業製品ではセンサケースやバッテリケースなどの自動車部品として,また生活用品では飲料用缶や調理用鍋などの製品として広く使われている1).近年の自動車や航空機などの搬送機器業界では,電子部品等の装備の拡充による車体重量が増加傾向にあり,燃費改善や運動性向上には車体の軽量化が強く要求されている2).軽量化を図るために鉄鋼材料から樹脂や軽金属への利用が進められている.軽金属の場合,鉄の密度■■■■■■■■■に比べて,アルミニウムの ■■■■■■■■やマグネシウム■■■■■■■■■の密度は小さく,また高いリサイクル性や高強度といった特徴から注目が寄せられている.アルミニウム合金やマグネシウム合金の多くは鋳造部品や押出部品によって置換えが行われているとともに,量産化,材料歩留り,製品の薄肉化の観点から,板材のプレス加工の適応が望まれている3).しかし,アルミニウム合金やマグネシウム合金は鉄鋼材料に比べて,延性や成形性が低い合金も少なくない.とくに,マグネシウム合金の場合,リチウムを添加したベータ型合金4)や組織制御した合金5)を除けば,多くの合金は室温での加工が困難である6).そのため,冷間での深絞り加工では成形がとても難しいのが現状である.成形を高める方法の■つとして,温間深絞り加工がある.この加工では成形前にフランジ部を加熱して変形抵抗を低下させ,パンチ肩部に接触した部分を冷却することで変形抵抗や強度を増加させ深絞り加工の成形性を向上させる技術である7).しかしながら,温間成形の場合,成形用金型に対して加熱冷却構造をもつ制御装置が必要となることやそれら設備に伴う高コストとなることの課題があるのが現状である.本研究では,摩擦攪拌接合FSW(Friction Stir Welding)や摩擦圧接FW(Friction Welding)の際に発生する摩擦熱に着目した.FSWでは,摩擦熱で軟化させた材料を攪拌して接合する技術である8).鉄鋼材料の場合,摩擦によって生じる温度は■■■℃以上となる.そこで,金型である兵庫県立大学大学院工学研究科( ■ ■年度一般研究開発助成■■■ ■ ■■■■■■■)教授原田泰典2.実験方法パンチ自体を加熱するため,パンチ内部に摩擦発熱の構造を取り込んだ.つまり,異種金属である摩擦発熱用の治具をパンチ内部に内蔵し,回転による摩擦熱を利用した温間深絞り加工を試みた.摩擦発熱したパンチの発熱温度と加工時間の関係について,また各治具の摩擦による摩耗量について調べた.また,摩擦発熱型パンチを用いた温間深絞り加工を行い,成形性について調べた. ・■摩擦発熱型パンチ温間深絞り加工のため,摩擦発熱型パンチの設計・試作を行った.図1に,温間加工のために試作した摩擦発熱型パンチとその固定台座の概略を示す.摩擦発熱として回転治具と発熱治具がパンチ内部に設置してある.各種回転治具は,接続した回転軸をボール盤のつかみ部に取り付け,回転速度2200~2800 rpmで回転し,回転治具と発熱治具の間で摩擦発熱を行った.回転軸はパンチ内部に設置した2つのベアリングにより固定し,発熱治具に対して100~300 Nの負荷で回転した.摩擦により生じた発熱温度は発熱治具内部の加工した穴に設置した熱電対によって測定を行った. ・ 摩擦表面観察と摩耗量摩擦摩耗後のおける回転治具および発熱治具の摩擦面はデジタルマイクロスコープによって観察を行った.また,試験後の回転治具と発熱治具の摩耗量について調べた.摩耗量は表面から材料内部方向への深さと定義した.図1摩擦発熱型パンチの概略− 102 −摩擦発熱によるマグネシウム合金容器成形技術の開発

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