天田財団_助成研究成果報告書2023_2
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キーワード:レーザ溶接,アルミニウム合金,レーザ誘起応力波,凝固割れ 速かつ高品質なレーザ溶接が求められている。アルミニウムは線膨張係数が大きいため、アルミニウム合金をレーザ溶接すると、凝固割れにより低融点の凝固相が発生する[4,5]。結晶粒の微細化は、凝固割れを低減し[6]、延性や強度などの機械特性を改善することから、材料強化法として用いられてきた[7,8]。一般に、合金を溶接して凝固させると、溶接粒の粗大化や低融点合金相の偏析が起こり、機械的特性の劣化や耐食性などの化学的特性の劣化を招く[6]。凝固金属の結晶粒を微細化出来れば、低融点合金相を分散させて歪の集中を解除し、耐凝固割れ性を大幅に改善出来る。 ■耐凝固割れ性を向上させるために、フィラーとともに微粒化材を添加する方法[9,10]、溶接電極と平行に外部磁場をかける方法[11]、母材表面に超音波振動を与える方法[12]、挿入したタングステンプローブで溶融池に直接超音波振動を与える方法[13]、アーク発振法[14]などが検討されている。これらの処理により、初晶デンドライトの破砕・溶融[15]、誘導圧力による部分過冷却領域の形成[16]、不純物の濡れ性改善[17]が起こる。これらの研究において、等軸晶の形成が促進されるため、凝固割れ感受性が低下することが報告されている[9-17]。しかし、現在の結晶粒微細化法には、超音波振動の寸法制限、高温溶融池に接した状態での高速レーザ溶接の追従困難、フィラー投入による接種剤添加などの欠点がある。 ■レーザ溶接に追従する非接触の高強度応力波の発生は、高強度パルスレーザを照射することで、アブレーションプラズマ膨張の反動力を発生させ、固体・液体内部に圧力波を伝播させることで実現出来る。レーザ駆動衝撃波の発生に関する研究は1980年代から数多く行われている[18-21]。例えば、波長1064 nm、パルス幅3 nsのNd:YAGレーザを真空中のアルミニウムに照射すると10 GPaの衝撃圧力が発生する。ここでは、連続波(CW)レーザ溶接時に溶接プール周辺に高強度の短パルスレーザを照射して粒状化する新しい溶接法である「短パルスレーザ誘起結晶化法」を提案する。短パルスレーザを用いることで、現行法の欠点を回避しつつ、固液界面に応力波を印加して結晶粒を微1.研究の目的と背景■■アルミニウム合金は、比強度、耐食性、加工性などに優れ、航空機や自動車などの製品に広く使用されている[1-3]。製造面では、生産時間、納期、コストの短縮のために、高大阪大学■大学院工学研究科■マテリアル生産科学専攻■( ■■■年度■重点研究開発助成■課題研究■■■■ ■■■ ■■■■■) 教授■佐野■智一■細化することが出来る。 ■短パルスレーザ照射による結晶粒微細化法をアルミニウム合金に適用することで、アルミニウムの凝固割れのない高速・高品質な溶接を実現出来る可能性がある。しかしながら、CWレーザ溶接時の短パルスレーザ照射がアルミニウム合金溶接金属の結晶粒微細化に及ぼす影響については、これまで報告されていない。そこで本研究では、レーザ溶接時に短パルスレーザを照射し、短パルスレーザ照射位置が溶接金属の組織に及ぼす影響を調べることを目的とした。 2.実験方法■■厚さ3.175 mmの2024-T3アルミニウム合金を使用した。この合金の化学組成を表1に示す。レーザ溶接の前にアセトンで油分と水分を除去した。ビードオンプレートのレーザ溶接は、圧延方向と直交する方向で行った。レーザ溶接の実験装置の概略をFig.1に示す。溶接実験は、波長1070 nm、出力1000 Wのシングルモードファイバーレーザ(古河電工製、FEC1000S)を用い、溶接速度16.6 mm/sで実施した。 ■短パルスレーザ照射位置が凝固組織に及ぼす影響を評価するため、溶接レーザ照射位置と短パルスレーザ照射位置の相対位置を変化させた。短パルスレーザの照射位置は、溶融池の前方、後方、境界、側方と変更した。この実験では、パルス幅10 ns、波長1064 nm、パルスエネルギー430 mJ、周波数10 HzのNd:YAGレーザ(Spectra-Physics社、Quanta-Ray)を使用した。レーザパルスは、焦点距離2 mの平凸レンズを用いてスポットサイズ2.1 mmに集光し、1.3×109 W/cm2の強度に相当する。短パルスレーザの照射位置をFig.2に示す。本稿では、照射位置を(x,y)座標で表現し、例えば(x,y) = (1.5,0)とする。Fig.2に示すように、溶接方向を正のx軸で記述し、垂直方向をy軸で記述した。溶融池の形状やスポット径は、高速度カメラで測定した。 ■高速度カメラ(nac Image Technology社製、MEMRECAM HX-3)によるその場観察を行い、短パルスレーザ照射が溶融池の流れに及ぼす影響を観察した。この観察では、10,000フレーム/秒を使用し、照明には、カメラ前方に中心波長940±10 nmのバンドパスフィルターと組み合わせた波長938±5 nmのレーザ(JENOPTIK Optical Systems GmbH, JOLD-45-CPXF-IL)を追加して使用した。 − 75 − 析出強化型アルミニウム合金の高強度継手を実現する 短パルスレーザ誘起圧力波支援高速レーザ溶接法の開発

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