Fig. 4 Poster session. 高い強度を有するフェムト秒メインレーザーパルスに先立って強度の低いプリパルスが存在する.高強度下ではプリパルスの強度も大きいため,プリパルスが加工対象物を傷つける等問題となっている.レーザーシステムの中には,レーザー増幅結晶等の平行平面を有する透過媒質が存在し,レーザーがその媒質を透過すると,透過媒質の表面と裏面の反射に起因する主パルスより時間的に後から追従するポストパルスが発生する.最近,メインパルスと時間的に遅いポストパルスの相互作用で生じる非線形結合効果により時間的に早いプリパルスが発生するという興味深いことが指摘されており,その理解・解明に関する議論がなされていた.この現象はメインパルスとポストパルスが互いに干渉し,メインパルスのスペクトル強度や位相が変調を受けることで,パルス圧縮後にプリパルスが発生する.出張者らはポストパルスを除去するためにウエッジ(微小な角度をつけた光学素子)を導入するなどの工夫をしてプリパルスの除去に成功している.ドイツ・ヘルムホルツ研究機構のグループはその現象を数値計算で再現するための計算コードを試作し,定性的に一致するところまで完成しており,今後の展開が期待される. フェムト秒レーザーの時間・空間品質向上は勿論,高出力化,高繰り返し化といった高度化技術は,今後産業応用で重要な生産性向上の観点からも不可欠なものである.このため,加工用はもちろん理化学用にも使える光源開発も進んでいた. ドイツのTRUMPFのグループは薄型ディスクタイプのYb:YAGレーザー媒質を用いてディスク背面より固体熱伝導で熱を速やかに除去することで,数百フェムト秒領域でkHzのレンジでマルチkWの平均出力を有するレーザーの開発に成功したとの報告があった.例えば0.7 J,1 kHz, 900 fsや0.1 J,20 kHz,900 fsなどのレーザーの報告があった.更に,自己位相変調を用いた追加パルス圧縮で630 fsのパルスを36 fsに再圧縮することにも成功していた.高速で高精度な加工に適した光源であると注目を集めていた. チェコのELI-BLのグループは15 fs, 1 kHz, 〜100 mJ のレーザーパルスを,非線形光学結晶を用いた光パラメトリックチャープパルス増幅(OPCPA)法を用いることで,直接10 fs台の極短パルスを高エネルギーで生成することに成功していた.今までできなかった極薄材料の加工等に使えるとのことであった. 日本の浜松ホトニクスのグループは,大面積レーザーピーニングにも使用できる低温冷却型Yb:YAGレーザー媒質を用いることで250 Jの大出力動作を実現していた.現在の繰り返し率は0.2 Hz程度であるが,スラブ型レーザー媒質の排熱を工夫することにより10 Hzまで高めるとのこと,今後の展開が楽しみである. 米国のコロラド州立大学のグループは,同様に低温冷却Yb:YAGをレーザー媒質として用い,薄型ディスク形状で背面より直接排熱できる方式で,1.1 J,1 kHz, 4.5 psが得られているとのことであった. また,レーザーの遠隔化や自動化といったDX化に関する報告も多くあった,レーザープロファイル画像等のリアルタイム可視化システムやレーザーのポインティングを常時監視し,そのデータを取得し,アクチュエータが付属したミラーを自動で制御することで,レーザー立ち上げ時間を短縮するとともに,長時間の安定供給を実現していた.小型装置から,例えばELI-NPのピーク出力が10 PW(=ペタワット=1015 W)のチタンサファイアレーザー媒質を用いた大型装置まで導入が段階的ではあるが急速に進んでいるように感じた.ELI-NPの10 PWレーザーは1分間に1ショットのショットレートとのことであった. 最後に,超高ピーク出力レーザーの報告も付け加えておく.英国のラザフォードアップルトン研究所では,PW,10 Hzチタンサファイアレーザー装置開発が建屋を含めて予算化され,2025年に運用を開始するとのことであった.米国ロチェスター大学のグループではOPCPAを用いてシングルショットではあるが,50 PWの出力を目指した小型の試験モジュールで0.5 PWを達成していた.中国科学院上海光学精密机機研究所が中心になりOPCPAを用いて同様にシングルショットではあるが100 PWレーザーの開発が予算化され,0.2 PWの小型のモジュールの試作が完了していた.2023年に1 PW,2024年に20 PW,2026年に50 PW,2027年に100 PWの出力を段階的に実現するとのことであった.韓国ではOPCPAを用いて200 PWレーザー開発の検討に入っているとのことであった. 先進的レーザーとその応用に関する国際会議において,最新の研究動向や各国の研究者との意見交換,及び義重τ開発の現状を把握することができた.今後の研究開発の遂行に活かしていきたい. 最後に,本会議への参加にあたり,天田財団より援助をいただきました.深く感謝の意を表し,厚くお礼申し上げます. 謝 辞 − 462 −
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