■ 1) TMS 2023 Annual Meeting & Exhibition, ■ 2) Hajime Yamamoto, Yudai Imagawa, Kazuhiro Ito, Ke Chen, Lanting Zhang: Journal of Manufacturing Processes, 69 (2021) 311-319. ・Dissimilar & Non-Ferrous ・Derivative Technologies 近年の流行を反映して,摩擦攪拌技術を応用した固相積層造形プロセスに関する講演が多数みられたほか,FSP/W部における高度な組織解析やモデリング/シミュレーション,最新のプロセスモニタリング/非破壊検査技術の紹介など,合計56講演が行われた.このように,摩擦攪拌技術に特化したセッションを連日に渡って開催するのは世https://www.tms.org/AnnualMeeting/TMS2023, 2023年4月5日参照. 謝■辞■参考文献 界的にみても珍しく,当該分野における最先端の研究を存分に見聞することができる絶好の機会であった. 4.発表概要 ■■■上記のセッションのうち,著者は「Friction Stir Processing」にて“Surface Alloying Due to WC Tool Wear during FSP and Its Effects on the Microstructure and Mechanical Properties of Topmost Steel Layer”という題目で講演を行った.講演内容の概要を以下に示す. ■FSPは,高速回転させたツールと呼ばれる棒状工具を材料表面に押し付けることで生じる摩擦熱と塑性変形を利用したFSWの応用技術であり,施工面表層組織を固相状態のまま動的再結晶により微細化・均質化することが可能である.鉄鋼材料のような高強度の金属材料へFSP/Wを適用する場合,施工時の温度上昇が大きいため,耐熱合金やセラミックス材料のような高温特性に優れた材質のツールが採用される.しかし,FSP/W中のツール摩耗は依然として不可避な問題であり,施工品質を維持するうえで大きな障害となっている.一方で,著者らはツール摩耗によってポジティブな効果が得られるという新展開をこれまでのTMS Annual Meeting & Exhibitionにて示してきた.具体的には,炭化タングステン(WC)ツールを用いた低炭素鋼溶接継手への高入熱FSPにおいて,ツールを構成する主要元素であるWやCなどが施工面表層に固溶し,その領域において著しい硬さ上昇と圧縮残留応力発生が起こることを明らかにしてきた.そこで本講演では,ツール元素がFSP中にどのようにして鋼中に固溶し,その濃度変化に応じてどのような組織形成・力学的挙動を示すか,機構解明を試みた成果について報告した. まず,WCツール元素の鋼中固溶機構の解明にあたり,FSP中のツール/鋼界面を観察するため,ストップアクション法による凍結試料の作製を試みた.具体的には,水槽内に設置した低炭素鋼板へのFSP途中でツールの移動と回転を急停止させ,それと同時に水を流し込むことにより,ツールを鋼中に埋め込んだままその周辺での組織変化を急冷・凍結させた.得られたツール/鋼界面からは,鋼側のFe元素がツール側のNi基バインダー内へと拡散するとともに,WC粒子との反応によってFe4W2C層の形成が観察された.透過電子顕微鏡による観察の結果,摩擦による著しいせん断変形が生じていると思われるFe4W2C/鋼界面において,両者の元素が約100 nm程度の幅で移動し■ていることがわかった.したがって,Fe4W2Cが機械的にWとCに分解されるとともに,それら元素が鋼側のオーステナイト中へ多量に固溶し,ツール通過後の冷却に伴いオーステナイトがマルテンサイト変態するという過程を踏んで,施工面が形成されると結論付けた.また,界面近傍ではFe4W2C層の粒子が鋼側へ離脱する様子も捉えており,固溶層の領域拡大にはFSPの攪拌効果によるそれら粒子の溶解の加速と,塑性流動を介した広範囲に及ぶ元素の移動が大きな役割を担っていることを明らかにした. 続いて,固溶層における圧縮残留応力発生機構の解明にあたり,ツール回転速度の調整により種々の濃度でツール元素を固溶させたFSP施工面に対し,X線を用いた残留オーステナイト相分率と残留応力の測定,ならびにそれら各測定点直下にて元素濃度測定を行った.通常のFSPの場合には,材料中への局所的な入熱によって冷却過程での熱収縮に伴う引張残留応力が発生するが,圧縮残留応力が発生するためにはその冷却過程にて施工面が膨張する必要がある.その膨張はマルテンサイト変態時に生じる膨張と考えられ,残留応力に対して有効な膨張量を支配するマルテンサイト変態開始温度(Ms点)に着目した.Ms点は鋼中の固溶元素量に依存しているため,各測定点における元素濃度を用いて計算し残留応力との関係を求めた結果,Ms点が150℃近傍で圧縮の最大値を示すことがわかった.Ms点が低下(ツール元素固溶量が増加)し,室温付近にてマルテンサイト変態が完了する場合に膨張量が最大化され,残留応力は引張から圧縮へと遷移する.一方,Ms点が150℃以下の施工面では,残留オーステナイト相分率が増加する傾向がみられ,室温でのマルテンサイト変態が未完了となったことでそれに伴う膨張量が不十分となり,引張残留応力が生じると結論付けた.また,ツール元素固溶量が大きな施工面表層では,FSP時の冷却過程で変態できなかった多量の残留オーステナイトが,引張応力負荷時や疲労き裂近傍の塑性域において加工誘起マルテンサイト変態を生じ,疲労特性に対して有効に作用することを確認しており,変態膨張量不足によって生じた引張残留応力の影響は無視できるものと考えている. ■本国際会議への参加にあたり,公益財団法人■天田財団より ■ 年度国際会議等参加助成ff若手研究者枠■を受けた.ここに記して謝意を表する.■− 453 −
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