天田財団_助成研究成果報告書2023_2
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図5■厚さ0.24 mm(a)と0.50 mm(b)のPPの膜厚と溝幅 厚の方が厚くなり,溝幅はサンプル厚さに依存しない結果となっている. ■3・1,3・2の実験結果より,薄膜形成メカニズムは以下のように考えられる.レーザ照射により分解温度以上に加熱された部分は蒸散し,その周辺の流動性を示す溶融部が溝の底に流れ込み膜を形成する.厚いサンプルの方が溶融部の体積が多くなり,溝幅は同程度のため,厚いサンプルの方が厚い膜が形成されると考えられる.PPでフルエンスの上昇に従い膜厚が厚くなるのは,フルエンスが大きいとレーザの走査速度が遅くなり,熱伝導により溶融部の体積が増加した結果と考えられる. ■■・■■熱モデルと疑似流体モデルによる薄膜加工シミュレーション ■PP,PETに対して2Dの熱モデルによるレーザ薄膜加工のシミュレーションと熱モデルに疑似的な流動を考慮した疑似流体モデルによるシミュレーションを行う.厚さ300 µmの樹脂の表面は20 ℃の空気と接しており,裏面は20 ℃の銅板と隙間なく密着している.x軸は水平方向,z軸は深さ方向,レーザ光は半径150 µmの2Dガウシアンビームでy方向に走査する.樹脂によるレーザ光の吸収はランバート・ベールの法則に従い,樹脂を透過したレーザ光は銅板表面で反射され,反射光も同様に吸収される.樹脂表面でのレーザ光反射と銅板による吸収は無視する.熱伝導はx-z平面の樹脂内のみ考慮し,x軸長さは半径の5倍で左右の境界では片方は対称面,もう片方は20℃一定となっている.樹脂の液相は考慮せずに溶融の潜熱は,分解温度までの総熱量が同一になるように比熱に組み込まれている.分解温度まで加熱され分解の潜熱以上のエネルギーを得た部分は大気に置き換えられて,レーザ光に対して透明になる.樹脂表面と空気の熱伝達係数は5 W/(m2K),樹脂裏面と銅板の熱伝達係数は1500 W/(m2K)3)であり,分解後に置き換えられた空気との熱伝達は考慮しない.表1以外の物性値はPP,PETそれぞれ比熱2.77 J/(g℃),2.00 J/(g℃),密度0.90 g/cm3 4),1.37 g/cm3 4),分解の潜熱378 J/g, 184 J/gである.疑似流体モデルでは熱モデル計算後,溶融粘度が100 Pas以下の部分を底に均すことで樹脂の流動を模擬している. ■図7に167 J/cm2でのPP,PETの熱モデルによるシミュレーション結果を示す.どちらもほぼ膜が残らない結果となっている.図8にフルエンスと膜厚の関係を示す.熱モデルではPP,PETともにフルエンスの増加に伴い膜厚が急速に減少しほとんど残らないが,疑似流体モデルでは PP,PETともに貫通することなく膜が形成され,定性的− 433 −(a) (a) (b) 図6■厚さ0.20 mm(a)と0.53 mm(b)のPETの膜厚と溝幅 (b)

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