キーワード:高出力レーザー,低温冷却■■■■■■レーザー,レーザー加工 設され、特に道路、トンネル、鉄道などの社会インフラについては、今後急速に老朽化が進むことが懸念されている。今後20年間で、建設後50年以上を経過する社会インフラの割合が加速度的に増加する見込みである。老朽化を原因とした事故は、世界各国で多発しており、橋の崩落、トンネルの天井落下、鉄道線路の破断など人命にかかわるようなものが多くみられる。老朽化する社会インフラの保守・メンテナンスには、莫大な費用が掛かることが試算されており、国土交通省の調査によると世界規模で200兆円、日本国内でも5兆円以上に上る。そのため、今後は、社会インフラの老朽化に対する、低コストで持続的かつ戦略的な、保守・メンテが求められている。老朽化する社会インフラにおいて、特に老朽化の原因となる部分は、金属構造材であることが多い。鉄筋コンクリート内の鉄筋、水道配管、鉄道・レール、橋梁はそのものが金属構造材である。このため、金属の老朽化に対する耐久すなわちは長寿命化を図ることが社会インフラの抱える課題を解決する一つの方法である。本研究では、金属構造材を長寿命化する方法として「レーザーピーニング」に着目している。金属の長寿命化とは、金属の疲労割れに対する耐力「疲労強度」を高めることであり、金属の疲労割れは、荷重が繰り返し負荷されることにより、材料表面に割れが生じる現象である。「レーザーピーニング」は、パルスレーザーにより金属表面にプラズマを発生させ、その圧力で部材に衝撃波を生じさせ残留応力を与える手法である。レーザーピーニングにより、付加できる残留応力は、圧縮応力であるためその硬度を高め疲労強度を高めることが可能である。金属の疲労強度を高める手法としては、無数の粒子を金属表面に衝突させ、表面に塑性変形を形成し、部材内部に圧縮残留応力を発生させる「ショットピーニング」と呼ばれる手法もある。この手法は、加工速度が速い一方、騒音・粉塵などの環境問題や処理可能な材料が限られるなどの問題や加工物の形状に制限があり、社会インフラへの応用は難しい。一方、レーザーピーニングは、騒音・粉塵は発生せず、レーザーのパラメータを調整することで、様々な材料の加工が可能であり、レーザーによる加工であるため加工物の形状の制限が緩いという特徴を持つ。また、発生する圧力は、ショットピーニングよりはるかに高い、数GPa以上であ1.研究の目的と背景 ■日本における社会資本は、高度経済成長期に集中的に建大阪大学■レーザー科学研究所■( ■ ■年度■奨励研究助成(若手研究者枠)■■■■ ■ ■ ■ ■■ ) 助教■荻野■純平■り、これにより数百μm~mmオーダーの領域に残留応力を付加可能である。ショットピーニングが、表面の変形により応力を付加するのに対し、レーザーピーニングは、プラズマによる衝撃波により応力を付与するため、表面の状態の変化も少なく後処理にかかるコストも少なく済むという特徴もある。このように、レーザーピーニングは、金属材料の疲労強度高める能力や環境性能、局所処理の操作性なども優れており、古くから研究されている[1-4]。近年では、様々な材料で疲労強度の向上が見られることが分かってきている[4-8]。しかしながら、その応用例は、航空機産業や、原子力産業などの付加価値の高いものが主流であり、社会に広く実用化されるには至っていないのが現状である。これは、レーザーピーニングの初期コストが高いことと、加工速度がショットピーニングと比較して遅いことが大きな問題である。加工速度が遅い原因は、ショットピーニンに使用されるレーザーのスペックにある。プラズマを励起するためには、レーザー強度は109 W/cm2以上が必要であり、産業応用において十分なスループットを確保しようとするとレーザーのエネルギーとしては必然的にJクラスのレーザーが必要となる。レーザーピーニングにおける加工速度は、レーザーの繰り返し周波数に依存するが、市販されているこのクラスのレーザーの繰り返し周波数は、高いものでも10 Hz程度であり、産業応用を考えた場合では十分ではない。レーザーピーニングのみならず、J級で高繰り返しの、簡便なレーザーが実現すれば、様々なレーザー加工において、大面積を高速に処理可能であり産業の発展に大きく貢献できると予想される。 本研究では、パルスエネルギーを >1J、繰り返し周波数を 100 Hzを目標とし、産業応用での利用が容易なロッド型レーザーにおいて、将来的にさらなる高出力化を望める固体レーザーの新技術の確立を目指し、低温Yb:YAGを用いた、高効率かつコンパクトなレーザーシステムの開発を行った。 ■2.実験方法 ・■■概要■■レーザーのパルスエネルギーの限界は一般に寄生発振・ASE(増幅自然放出)と熱により決まる。励起により生じる熱を排熱する手法は様々あるが、エネルギーが J 級となると必然的にレーザーの口径が大きくなり、一般的にデ− 427 − 高速レーザー加工のための 高出力繰り返しパルスレーザーの開発
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