2・2 成形性におよぼす部分高強度化の影響 2.実験方法 キーワード:プレス成形,レーザ熱処理,組織制御 図1 レーザ局所焼入れの模式図 成形において高張力鋼板の適用が拡大している.しかし,一般的に強度と成形性の両立は困難であり,強度の上昇に伴って成形性が低下するといった問題がある1).今後のさらなる高強度化の流れに対応するために,強度と成形性に優れた材料の開発が強く望まれている.強度と成形性のような,トレードオフの性質が共存し得る材料として傾斜機能材料が注目されている. 傾斜機能材料とは, 「空間的に1つの機能から他の機能へと連続的または段階的に変化する一体の材料」と定義され,基本的に組成分布を制御することで性質を変化させたものが多い2).一方で, 鉄鋼材料には材料特性の異なる様々な変態組織が存在するため,組織制御によって性質を変化させることが可能である3). 本研究では,高周波やレーザといった局所加熱の可能な熱源を用いて,組織を制御することで,部分的に材料特性を変化させ,成形品強度やプレス成形性を向上させる技術の開発に取り組んだ.具体的には,成形前の軟鋼板に対して局所焼入れを行うことで,部分的に高強度化した試料 (部分高強度材) を作製した.次に,部分高強度材の深絞り成形を行い,限界絞り比や板厚分布の測定により成形性におよぼす部分高強度化の影響を調べた.また,深絞り成形品の圧縮荷重を評価することで,成形品強度におよぼす部分高強度化の影響を明らかにした.本稿では,レーザ局所焼入れを施した試料を用いて実験を行った結果について述べる. 2・1 レーザを用いた組織制御による部分高強度化 供試材は公称板厚1.0 mmの冷間圧延鋼板 (SPCC) であり,化学成分はC: 0.03,Si: 0.01,Mn: 0.18,P: 0.01,S: 0.005,Fe: Bal. (wt%) である.図1に示すように,銅製の水冷ブロックの上に固定した試料に対して,レーザを照射し,局所焼入れを行った.本研究で用いたレーザは,最大出力2 kWの半導体レーザであり,加工点におけるビームスポットは5 mm×5 mmの矩形形状である.レーザ照射条件を表1にまとめる.φ80 mmの軟鋼板において,深絞り成形用パンチ肩部近傍を高強度化するため,出力960 W,速度12 mm/sでφ40 mmの円を描くようにレーザを1周照射し,局所焼入れを行った (1 lap材).また,種々の高強度部幅1.研究の目的と背景 近年,自動車の軽量化および安全性向上のため,プレスを有する試料の作製を目的として,位置を少しずつずらして複数回レーザを照射した.2 laps材はφ36/44 mmの円弧に沿って計2周,3 laps材はφ32/40/48 mmの円弧に沿って計3周レーザを照射した試料である.レーザ局所焼入れによる高強度化の有無を確認するため,断面の光学顕微鏡観察およびビッカース硬さ測定を行った. 受け入れまま材と種々の条件で局所焼入れを施した試2に示す.工具には平頭パンチ (φ40 mm,R4) とダイ (φ42.5,R8) を用い,成形速度を3 mm/s,しわ押さえ力を10 kNとして,ストローク30 mmまで成形した.潤滑剤には動粘度25 mm2/s (40 C)のベースオイルを使用した.さらに,光学式プレス成形解析システムARGUS (GOM社製) により,受け入れまま材と3 laps材の成形後の板厚分布を算出した.光学式プレス成形解析とは,成形前の試料表面料 (1 lap材,2 laps材,3 laps材) の深絞り成形実験を行い,限界絞り比を評価した.深絞り成形実験の模式図を図− 377 −大阪産業技術研究所 加工成形研究部 (2020年度 奨励研究助成(若手研究者枠) AF-2020037-C2) 研究員 坪井 瑞記 表1 レーザ照射条件 高周波およびレーザを用いた部分的な組織制御による 強度とプレス成形性の両立
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