天田財団_助成研究成果報告書2023_2
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■ ■ 高速度カメラで撮影したデータを同フローに基づいて処理することで,インデンタ近傍における材料内部の速度分布,ひずみ速度分布,ひずみ分布,すべり線場などの情報が獲得できる. 3.■■■■■■■観察に基づく材料の変形挙動の可視化 本研究では,まず先端角30°のインデンタを用いた場合の押し込み試験(押し込み速度1 mm/s)について,材料の塑性変形挙動の可視化を試みた.図5は,同条件におけるインデンタ近傍の材料の経時変化を示している.同図に示すように,インデンタ側面に対して直交方向に引いたすべり線場(図5(a))の変化を追うことで,同条件では材料がインデンタ側面に巻き込まれるようにして変形していることがわかる.これは,インデンタ近傍の材料は,主にインデンタ側面-材料間の摩擦力によって,せん断変形していることを示している. さらに,塑性加工中に発生する様々な変形場を再現するために,異なる先端角(60,90,120°)を有するインデンタを用いて押し込み試験を行った.図6に,各先端角を有するインデンタ近傍における,材料のすべり線場を示す.同図に示すように,先端角30°のインデンタ(図4 (c))では,材料の変形はインデンタ側面近傍のみで生じていたのに対して,先端角が60°(図5 (a)),90°(図5 (b))と大きくなるにつれて,材料の変形領域が拡大していることが確認できる.さらに,先端角120°のインデンタを用いた場合においては(図5 (c)),先端角の小さいインデンタで見られたようなインデンタ側面に巻き込まれるようなせん断変形挙動が消失し,インデンタ近傍の材料はせん断変形を生じることなく沈み込んでいることがわかる.以上のように,インデンタの先端角度の変化にともなって,材料の変形挙動が大きく変化していることが示された. さらに図7は,先端角30°のインデンタを用いた場合について,材料内部における垂直方向(VV)および水平方向の速度分布(VH)を示した結果である.同図からわかるように,同条件ではVVはインデンタ側面-材料界面のごく近傍において局所的に生じているのに対して,VHは材料内部においてほぼ一様に分布している.これは,先端角の小さいインデンタの近傍においては,インデンタ側面-材料界面の摩擦力によってせん断変形が生じているのと同時に,インデンタの押し込みによって材料が左右方向に分離していることを示している.一方で,図8は,先端角120°のインデンタにおける各方向の速度分布を示している.同図に示すように,先端角の大きいインデンタ直下では,材料内部にはインデンタの押し込み速度(1 mm/s)とほぼ同程度の速度で鉛直方向に移動している領域が広く存在しており,水平方向への変形はこの領域外でのみ生じている.これは,先端角の大きいインデンタの直下においては,材料が圧縮変形を受けることによって加工硬化領域(Dead metal zone)を形成し,この領域がインデンタと一体となって材料を変形させていることを示している. − 352 −(a) t = t0 (b) t = t0+0.3s (c) t = t0+0.5s (a) 先端角60° (b) 先端角90° (c) 先端角120° (a) 垂直方向(VV) (b) 水平方向(VH) (a) 垂直方向(VV) (b) 水平方向(VH) (a) 先端角30° (b) 先端角120° 図6■材料内部における速度分布(先端角30°) 図7■材料内部における速度分布(先端角120°) 図4■材料のすべり線場(先端角30°) 図5■材料のすべり線場(t = t0+0.5s) 図8■材料内部におけるひずみ分布■

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