天田財団_助成研究成果報告書2023_2
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キーワード:レーザピーニング,疲労強度,CoCr合金 図2■体内での折損症例.曲率が大きく,引張残留応力が高いと予想される背中側部分に,前屈姿勢による引張応力が繰り返し作用し,折損する(東邦大学病院提供) 図1■脊柱支持ロッド2本の埋込手術による 脊柱側湾症の改善(参照:慶應義塾大学病院HP) ( ■ ■年度■一般研究開発助成■■■■ ■ ■ ■■■■ ) 中にオンサイトで背骨に合わせて曲げ加工し,そのまま体内へ設置している.このため,応力緩和処理などが施されていないので,ロッドには残留応力のある状態で使用される.更に体内のロッドには,日常生活において体重や運動による負荷が常にかかるため,術後数年以内に図2のように湾曲部を起点に体内で折損する事例が多い.これは,湾曲部の内側には曲げ加工により引張残留応力が存在する上に,上半身の前屈動作に併せてさらに引張応力が繰り返しかかることによる疲労破壊であると予想される. ■そこで,筆者らは,この湾曲している脊柱固定ロッドの疲労強度向上のためにレーザピーニング(LP)と呼ばれる表面処理を適用することを検討した.LPは,水中に設置した材料表面に短パルスレーザを照射し,発生するプラズマの衝撃力により材料表面に圧縮残留応力を付与し疲労強度の向上や応力腐食割れ感受性の低減をはかる手法である.類似の手法であるショットピーニングと比較し,水とレーザのみで実施可能であるため,クリーンかつ再現性の高い処理が可能なため,医療現場での応用や医療材料との親和性が高い. ■本研究では,脊柱固定ロッドに用いられるCoCr合金へのLPの適用と,その効果を評価し明らかにする.さらに,1.研究の目的と背景 ■脊柱側湾症や脊柱後湾症と呼ばれる,背骨が大きく湾曲する症例に対し,近年,生体親和材料であるCoCr合金やTi合金製のロッドを背骨に直接締結し矯正する整形外科手術が行われている(図1).この矯正術では,背骨のS字カーブに沿うように締結するため,真直なロッド材を術東京工業大学■工学院■准教授■青野■祐子■■■■■ 曲げ加工後の脊柱固定ロッドにLPを施し,疲労試験により提案手法の有効性を示す. 2.実験方法 ■ ・■■供試材■■試料として,医療用に使用されている直径6 mmのCoCr合金ロッド(NuVasive製)を使用した.組成はCo64%,Cr28%,Mo8%である.本研究では,CoCr合金へのLP適用の基礎検討として応力測定,硬さ測定や耐摩耗性試験に平面試料も使用する.平面試料はこの丸棒をワイヤ放電で切断し高さ5 mmの円柱形状に加工し,その加工断面を使用した.ワイヤ放電加工直後の断面は熱影響等による変質層が存在する粗面であるので,ダイヤモンドペーストによる機械研磨で仕上げた. ■疲労試験用のロッドは,真直ロッドと湾曲ロッドを用意した.進捗ロッドは長さ90 mmにカットした後,中央部をワイヤ放電加工で薄板にカットした.一方,湾曲ロッドは丸棒を約45°に曲げ加工したものを使用した. ■ ・ ■レーザピーニング処理■レーザはQスイッチNd:YAGレーザ(Continuum Precision II 9100)の第二高調波(波長532 nm)を用いた.レーザ光はミラー2枚を経由し,レンズを介してレーザ光を試料表面に照射した.2枚のミラーの内,1枚に波長532 nm付近の光のみを反射するダイクロイックミラーを用い,同軸上に後方配置したCMOSカメラにより,試料表面を観察し,焦点および照射位置の調整を行った.また,− 347 −レーザピーニング処理による 脊柱固定ロッド材料の疲労強度向上 折損

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