天田財団_助成研究成果報告書2023_2
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図4■レーザー加速で得られた(a)エネルギー分解された電子像、(b)エネルギースペクトルの一例。 図4はガス密度が2x1019 cm-3(プラズマ電子密度が4x1019 cm-3に相当)で得られた電子線の(a)エネルギー分解された電子像、(b)エネルギースペクトルである。図4(a)の電子像は30レーザーショットの重ね撮りで得られており、それを平均化して図4(b)のエネルギースペクトルを得ている。最高エネルギーは100 MeV、エネルギー分布が■■■■■■■■■■■■■の形のボルツマ度は4.7x1018 W/cm2であった。レーザー進行方向に加速される高エネルギー電子線を磁場(磁場強度0.72 T)で軌道を曲げてエネルギー分解する電子エネルギー計測装置に導き、電子線特性を評価した。エネルギー分解された電子像はイメージングプレート上に記録された。 ン状分布を持つ電子線が得られた。エネルギー分布の指標となる実効温度は、Teff = 15 MeVと見積もられた。また、50 MeV以上のエネルギーを持つ電子数は106 個と見積もられた。ガスジェット密度を変化させて、電子線の特性を調べた。ガス密度が1.5x1019 cm-3以下では高エネルギー電子線は発生しなかった。 レーザー加速実験に着手することはできたが、レーザー装置を始め実験装置の故障が頻発した。新規に調達が必要となった装置もあり、世界的な半導体不足の影響もあり納品に想定以上の時間を要したため、研究期間のかなりの期間、電子加速実験を行うことができなかった。そのため、予定していたレーザー加速電子線の高性能化、ベータトロンX線の特性評価、レーザー駆動衝撃波イメージングの実験を実施できなかった。 4.粒子シミュレーションを用いた円偏光ベータトロンX線発生の評価 レーザー加速で発生するベータトロンX線は、フェムト秒の超短X線パルスであるという特徴に加え、ドライバーレーザーパルスと同期しており、フェムト秒レーザープロセシングにおいて誘起される超高速現象を観測するプローブとして有用である7,8)。ベータトロンX線をプローブとして利活用するには、その特性を制御できることが不可欠である。X線の光子エネルギーは、電子線の特性を制御することによって制御可能である4,5)。さらに、円偏光X線の発生等、偏光特性の制御機能が加われば、その利用範囲を拡張することが期待できる。 近年、超高速メモリを開発するために、フェムト秒レーザーを用いて磁性体の磁性を超高速で制御し、その磁性変化のダイナミクスを超短パルスX線で観測する研究が進められている9,10)。磁性体の分析、評価には、円偏光X線の吸収率に、偏光回転が左回り、右回りで、差が生じるX線磁気円二色性(X-ray Magnetic Circular Dichroism: XMCD)測定が利用される。強磁性体の鉄、コバルトは等の3d 遷移金属は、0.7〜0.9 keVにL吸収端があるので、2p-3d遷移のX線吸収を利用して、これら元素の磁性を担う3d軌道の情報を得ることができる。そのため、1 keV近傍のX線を発生する必要がある。赤外〜紫外域のレーザー光であれば、四分の一波長板を透過させて、ほぼ100%の効率で直線偏光のレーザー光を円偏光に変換することができる。しかし、1 keV近傍のX線に対しては、効率の高い四分の一波長板に相当する位相子が存在しないので、光源から円偏光X線を直接発生する必要がある。レーザー加速による円偏光ベータトロンX線発生の可能性をシミュレーションによって検証した。 円偏光ベータトロンX線を発生するために、円偏光のレーザーパルスを用いて、レーザー加速を行うことを考案し、三次元の粒子シミュレーションを行った。波長800 nm、パルス幅40 fsの円偏光レーザーパルスを電子密度が2x1019 cm-3のプラズマに、集光強度2x1019 W/cm2で照射した時のシミュレーション結果を図5に示す。図5(a)(b)において、レーザーパルスはz軸方向に伝搬し、矢印で示す様にレーザー伝搬方向に対して右回りに偏光が回転している。図5(a)はプラズマ電子密度の2次元断面図である。図1と同様に中央の高密度領域に囲まれた低密度領域に、電子群が捕捉されレーザー伝搬方向に加速される様子が捉えられている。図5(b)は、この加速電子群の3次元密度分布、図5(c)はそのエネルギー分布を示す。90 MeV近傍にピークを持つエネルギーの揃った準単色電子線が発生している。一方、この電子群は円偏光レーザーの電場と共鳴し、螺旋運動をしている。これは円偏光の放射光を発生するヘリカルアンジュレーター中の高エネルギー電子の運動と同じであり、円偏光のベータトロンX線が発生することを示唆している。図5(d)は理論モデルに従い、図5(c)の電子線エネルギー分布を用いて評価したベータトロンX線のエネルギースペクトルである。1 keV近傍ピークを持つX線が得られることが予測されている。また、図5(a)(b)に見られる様に、加− 340 −

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