天田財団_助成研究成果報告書2023_2
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図2の衝撃波を与える金属ターゲットの幅は、少なくともレーザーの集光径(数10 µm程度)よりも大きくする必要がある。例えば、30 µmのアルミニウムのX線透過像を得るには、光子エネルギーが5 keV以上のX線が必要となる。ベータトロンX線のエネルギーは電子線エネルギーの2乗に比例し、先行研究の理論モデルのスケーリング5)に基づくと、数keVのX線を得るにはエネルギー150 MeV以上の電子線をレーザー加速により発生する必要がある。 3.レーザー加速による高エネルギー電子線発生実験 図2■レーザー駆動X線を用いたレーザー駆動衝撃波イメージングシステムの概要。 図3■チタンサファイアレーザーの特性。(a)レーザースペクトル。(b)FROGソノグラム像。(c)集光スポット像と(d)その空間プロファイル。 ■・ ■電子加速実験■によって強い圧縮を受けた領域の密度つまりX線吸収率が高くなり、X線吸収率の空間分布が発生する。X線パルスとレーザーパルスの遅延時間を変化させ、ポンプ・プローブ法によりX線吸収率分布の時間発展を得、吸収率より密度を評価し、圧力、速度等の衝撃波の特性を評価する。 ■・■■チタンサファイアレーザー装置の高出力化■レーザー加速でより高エネルギーの電子線を得るために、ドライバーレーザーとなるフェムト秒チタンサファイアレーザー装置の高出力化を行った。パルス圧縮に高い回折効率が得られる溝本数が1480 lines/mmの回折格子を利用することとして装置の改造を行った。 パルス伸長器には溝本数が1200 lines/mmの回折格子が用いられているため、パルス伸長と圧縮に用いる回折格子の溝本数が異なるMixed Grating方式6)を採用した。パルス伸長器もMixed Grating方式に整合するように、回折格子への入射角の最適化等の改造を行った。計算値ではあるが、パルス伸長後のパルス幅(半値全幅)をこれまでの350 ps から500 psに伸ばすことができ、増幅器列での非線形光学効果を低減することができた。最終増幅器後、パルス圧縮前で1.6 Jのパルスエネルギーが得られた。そのレーザースペクトルを図3(a)に示す。スペクトル幅は35 nm(半値全幅)であった。圧縮後のレーザーパルスの特性を時間分解周波数ゲート法(Frequency Resolved Optical Gating : FROG)で測定した。図3(b)はそのソノグラム像であり、パルス幅は40 fsであった。Mixed Grating方式は高次分散補償が可能という利点を有している。さらなるパルス圧縮器の調整が必要と考えられるが、残留高次分散の少ないFROGのソノグラム像が得られている。図3(c)(d)は、パルス圧縮後のレーザーパルスを焦点距離720 mmの軸外し放物面鏡で集光した時の集光スポット像とx軸、y軸方向の空間プロファイルである。集光径は13 µm(半値全幅)で、縦横比が1:1.03と真円に近い集光スポット像が得られており、回折格子対の平行度も所定の精度で調整できていることを確認できた。また、パルス圧縮器のエネルギー透過率は70%であった。 これらのレーザー装置の改良により、中心波長800 nm、エネルギー1.1 J、パルス幅40 fs(ピークパワー27 TW)のレーザーパルスを得ることができ、これまでの1.5倍に出力を増強できた。 チタンサファイアレーザー装置の改造後、電子加速実験に着手した。実験配置は図2の左下に示す。波長800 nm、エネルギー700 mJ、パルス幅40 fsの直線偏光のレーザーパルスを焦点距離720 mmの軸外し放物面鏡で集光し、長さ2 mmのヘリウムガスジェットに照射した。集光強− 339 −

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