天田財団_助成研究成果報告書2023_2
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図1:テラヘルツ波の周波数範囲。定義にもよるが、電波と光波の中間領域にあたる0.1~10 THzの周波数領域を指す。 キーワード:テラヘルツ波,フォトニックジェットレンズ,炭酸ガスレーザー 図2:フォトニックジェットレンズの概念図。誘電率の低い誘電体に対して平面電磁波が入射すると、反対側近傍の狭い領域に電磁波強度が増大する領域が現れる。 れている。例えば、その高い物質透過性を活かしたセキュリティ検査や物質固有の吸収スペクトルを利用した爆発物検出などが挙げられる。また、第6世代移動通信システム(いわゆる6G)では、テラヘルツ帯の電磁波をキャリアーとして使用することから、現在、テラヘルツ波には多くの注目が集まっている。 テラヘルツ帯は光波や電波の領域とは異なり、安価で手軽な高出力光源や高感度検出器が存在しないことが大きな課題となっている。そのため、微弱なテラヘルツ波を効率よく集光するアンテナ技術が実用化には必要不可欠である。また、波長が長い(0.1 THzで3 mm)ため通常のレンズによる集光では回折限界のために高い空間分解能を得ることが難しい。以上のような理由から、テラヘルツ帯では高い電磁波強度を実現し、また、回折限界を超えて集光できる技術が必要不可欠である。 本研究では、テラヘルツ帯において回折限界を超えた集光性能を実現可能な方法としてフォトニックジェットレンズ(図2)と呼ばれる素子に着目する2)。フォトニックジェットレンズとは、波長程度の大きさの誘電体に対し電磁波を照射すると誘電体背後にフォトニックジェットと呼ばれる強い電磁波領域が現れる現象を用いたレンズのことを指す。過去の報告例では、/3~/5程度の領域に20-30倍程度増強された電磁波を集光できることが報告されている3)。実際のこのような特性が実現できれば、筆者らが独自に開発した力検出型テラヘルツESR測定法4-6)の測定感度を現在の値から1桁以上の向上することが可能になる。また、理論的に回折限界を超えた集光性能が期待できることから、イメージング用の集光素子としても有用である。本研究ではこのフォトニックジェットレンズに着目し、テラヘルツ帯で動作するフォトニックジェットレンズを実際に作製するとともに、その有用性を実証することを目的として研究を行った。 2.電磁波シミュレーション ■ ・■■フォトニックジェットレンズの設計■■まず、テラヘルツ帯で動作するフォトニックジェットレ1.研究の目的と背景 ■テラヘルツ波1)とは、一般に周波数が0.1 THzから10 THzの電磁波のことを指す(図1)。光波と電波の中間にあたる周波数領域であり、応用に向けた様々な研究がなさ神戸大学■大学院理学研究科■( ■ ■年度■一般研究開発助成■■■■ ■ ■ ■■■■ ) 准教授■大道■英二■ンズの素材となる誘電体について検討した。テラヘルツ波をよく透過することに加え、レーザーで加工が可能な素材を選ぶ必要がある7)。また、フォトニックジェットが誘電体の外側に発生するためには屈折率nが2よりも小さい素材が適当である2)。そのため、テラヘルツ波の吸収は小さいが屈折率が大きなシリコンは不向きである。セラミックス材料は一般にテラヘルツ波をよく透過するがレーザーによる加工が容易ではない。また、一般的なガラスはテラヘルツ波を吸収するため、レンズとしての用途には適していない。以上のような要素を考慮に入れて、本研究では石英(n~1.4-1.5)、テフロン(n~1.3)、ポリプロピレン(n ~1.5)に着目した。石英は可視光に対し透明であり、また、熱にも強いことからレーザーによる高精度な加工が可能である。テフロンやポリプロピレンは可視光領域では不透明であるが、テラヘルツ波の吸収が小さく、また、加工しやすいという利点がある。■− 319 −レーザー加工によるテラヘルツ帯 フォトニックジェットレンズの作製

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