天田財団_助成研究成果報告書2023_2
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キーワード:水晶,非線形光学波長変換,擬似位相整合 1.研究の目的と背景 ■■・■■研究の目的■■将来のレーザー出力向上に伴う非線形光学結晶の耐久性限界を見据え、既存の波長変換素子に比べ耐久性や安定性に優れた、新たな波長変換素子の実現が求められている。これに対し本研究では、これまでは波長変換素子には利用されてこなかった水晶(α相石英)を用いた、高耐久性と高機能性を併せ持つ新規波長変換素子の実現を目的として、本研究を実施した。 ■■・ ■研究の背景■■レーザーと呼ばれるコヒーレント光の発生手法として、所望波長を直接発振させるものと、なんらかの素子等を用いた波長変換によるものがある。Nd:YAGやTiサファイアに代表される固体レーザーは、限られた波長において高輝度高出力動作が可能であるが、その波長選択性は極めて限定されている。このため、高輝度高出力の固体レーザーを励起光源とした波長変換が利用されている。そこではLiNbO3(LN)などの強誘電体1)、あるいはLiB3O5(LBO)などホウ素系結晶が広く利用されているが、近年のレーザーの性能向上により結晶損傷が顕著な問題となりつつある。図1はLNおよびLBOの損傷写真である。 図1■損傷した従来の波長変換結晶 ■本研究では新たな高耐久波長変換素子用結晶として水晶に着目している。水晶は産業界では圧電性を活かした振動子用途で広く利用されている他、その優れた光学特性を活かし波長板やフィルターなどの光学用途でも利用されており、人工的に育成された大型の高品質結晶が容易に入手可能であるという特長がある。また、レーザーや非線形光学波長変換用途で見た場合、世界で初めての波長変換実験(1961年、P. A. Franken他2))に利用された複屈折性を有する非線形光学材料として知られている。しかしその複屈折性が極小であるため、通常の複屈折位相整合(BPM、Birefringent Phase Matching)法では、高効率高出力波長変換への適用は不可能である。 ■これに対し、近年の擬似位相整合(QPM、Quasi Phase 理化学研究所■放射光科学研究センター■先端光源開発研究部門■( ■ ■年度■一般研究開発助成■■■■ ■ ■ ■■■■ ) 研究員■石月■秀貴■Matching)法の発展が、水晶の波長変換分野における有効利用を可能とすると期待し、本研究を進めている。QPM法は、結晶固有の非線形光学定数の周期反転構造を人為的に形成することで、水晶など従来のBPMでは有効な波長変換が不可能であった材料の利用を可能とする手法である3)。さらにこのQPM法では、周期反転構造の設計により、従来のBPM法では実現できない機能(動作波長域拡大、スペクトル受容幅拡大、チャープ動作など)が設計・付与可能であるという特長も併せ持つ。 ■本研究で検討する、水晶を利用するQPM素子(QPM水晶)は、材料特性である高耐久高安定性、真空紫外やテラヘルツ波長域などでも利用可能な広帯域動作特性、QPM利用による高機能特性など、従来に無い波長変換素子が実現できる。 ■■・■■従来の研究概要とQPMスタンプ法■■QPM構造形成の代表的手法として、図2に示すように(a)薄板積層、(b)結晶成長、(c)周期反転などがある。この内で(a)薄板積層は材料を問わず適用可能な一方で短周期QPM構造化が困難である。これとは逆に、(b)結晶成長および(c)周期反転は短周期構造化が比較的容易である一方でそれぞれに材料限定がある、という特徴がある。 ■これに対し、これまでにQPM水晶の初期検討として、(a)薄板積層に基づく薄板水晶板の交互積層を用いたQPM水晶の基礎評価を実施している4)。この際は最薄で約120 µmの水晶薄板を積層することでQPM水晶を形成し、波長1.064 µmのパルスNd:YAGレーザー励起により波長532nm緑色光や266nm紫外光発生を確認し、QPM水晶の可能性を示した。しかし同時に、この(a)薄板積層では各水晶薄板の厚み制御(QPM周期制御)や薄板化(QPM短周期化)が困難である点に加え、積層数増大にも難点があるため、特に短波長動作時での変換効率向上が困難であった。 図2■QPM構造形成手法 − 304 −擬似位相整合水晶を利用した高輝度紫外パルス光源の研究

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