天田財団_助成研究成果報告書2023_2
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3.研究・実験方法 り返し周波数10 HzのNd:YAGレーザーを用いた。フォトニック結晶ファイバーを用いて、チタンサファイアレーザー発振器の出力光から中心波長1064 nmを含むスーパーコンティニウム光を生成する。これをファイバーアンプで増幅し、ポッケルスセルとビームスプリッタを用いることで80 MHzから10 Hzへと分周した後、Nd:YAG固体増幅器で増幅する。次にLBO結晶を用いて波長を532 nmへと変換することで上記の励起用レーザーパルスを発生させた。本研究ではこの励起レーザーを結晶の片側から入射させる、片面励起での増幅実験を行った。レーザー増幅の媒質には直径20 mm、結晶厚15 mm、 吸収効率92.3%のGT ADVANCED製チタンサファイア結晶を用いた。結晶に入射する4つのパスは結晶に対して2.5°、5°のいずれかの角度で入射するよう設計されている。 本研究で用いる光学系は伝播に伴うビーム系の拡大を抑制するためにレンズ対を用いた像転送光学系を組み込んでいる。2対4枚の焦点距離2000 mmの平凸シングレットレンズを多重パス増幅器の光学系に組み込み18 mの距離の伝搬によるビーム径拡大を抑制した。 3・1 結合効率とビームプロファイルの測定 結合効率を評価するため、図6のような光学系を用いて結合効率ηc=Pcombined/(Pcombined+Puncombined)を定義する。 図6 結合効率計測光学系 ここでPcombined は結合出力光強度、Puncombined は非結合光強度を指す。素子の持つ旋光角波長依存性や不十分な調整等が原因で設計通りに結合しなかったレーザーパルスは結合したレーザーパルスとは異なる偏光角を持つ。これらは出力光を取り出すPBSを直進し、非結合出力を取り出すPBSから出力される。これは上図のようにCBC光学系の上流にファラデーアイソレータを導入することで評価できる。ファラデーローテータと1/2波長板の偏光回転方向を入力光に対してそれぞれ相殺し合うように調整することで、出力光のみ偏光角を90°回転させる作りにすることが可能である。図7にCBC光学系を多重パス光学系に接続した時の結合出力、非結合出力のスペクトル比較を示す。2つのスペクトルを波長734.4〜877.0 nmの範囲で積分し結合効率の計算を行ったところ94 %の値が得られた。 この結合効率ηcによる光学系の動作評価はコヒーレント結合の先行研究でも行われている。 F. Guichardらによるファイバーアンプを用いたパルス幅300 fs、エネルギー1.1 mJの出力を得る2分割受動コヒーレント結合ではηc =〜94%である5)。また、L. Daniaultらによる時間的に4分割、空間的に2分割の計8分割の受動コヒーレント結合を用いたファイバーアンプによる200 fs、200 nJの増幅を行った研究ではηc =〜96%を達成している6)。本研究はそれらよりも調整が困難になる固体レーザーでの時空間4分割コヒーレント結合でありながら先行研究とほぼ同じ値が得られており、我々はコヒーレント結合が本実験系で十分動作していると判断した。 図7 結合光と非結合光におけるスペクトルの比較 図8に多重パス増幅器に接続したデュアルサニャック干渉計光学系の入出力ビームプロファイルを示す。良好なシングルビーム出力を確認した。 図8 光学系入射(a)と出射(b)ビームプロファイル 3・2 分割パルス増幅動作の評価 図9に励起エネルギーに対する増幅利得特性を示す。ここでは、オシロスコープとフォトダイオードで増幅前後のレーザーパルス列のピークを比較することで増幅利得を評価した。得られた利得の最大値は29であった。実線はFrantz-Nodvikの式7)で求めた理論特性曲線であり、測定された利得は概ね理論値と一致している。ここから、別々に増幅された4つのパルスがそれぞれエネルギーを大きく失うことなく再結合しており、これは分割を行わずに同エネルギーの単一パルスを増幅した場合と得られる利得が遜色ないと判断できる。原理実証を目的とした小型増幅器により、分割フェムト秒極短パルスを増幅・再結合することに成功し、理論限界の増幅利得を実現した。この結果より、我々の提案するコヒーレント結合法が増幅フェムト秒レーザー光に対して有効な手法であることが示された。 − 291 −

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