天田財団_助成研究成果報告書2023_2
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キーワード:フェムト秒レーザー,コヒーレント結合,微細加工 2.研究・実験方法 2・1 研究方法の概要 これまでの研究N2パルスNパルスNパルス本研究で行うこと 空間分割器入力レーザー分割器入力レーザー増幅出力レーザー結合器位相空間制御器結合器ファイバー増幅出力レーザー入力増幅器増幅位相検出器時間入力空間伝搬光路切り替え入力Nパルス分割器時間固体高出力増幅器空間増幅N2パルス結合器✓✓入力レーザーを複数のビームに空間分割ファイバー増幅器で増幅位相を揃えて単一のビームに結合✓✓✓✓✓✓高精度・高速の位相能動位相制御が必要✓✓入力レーザーを複数のビームに時間空間分割固体高出力増幅器で増幅分割されたビームが往路と復路で光路を入替✓✓✓✓✓✓互いに等しい伝搬距離となり位相が受動的に一致器の開発であった。レーザー損傷を避けるために、パワー増大に応じて増幅器口径は大きくなり、核融合研究用レーザーでは40 cm角にも達する1)。これ以上の大口径化は、レーザー媒質内の寄生発振等によりレーザー増幅効率が低下するため、この最も単純で確実な技術は限界にきている。従って、レーザーパワーを桁違いに高く、且つ、小型装置において極限まで高めるには、既往の技術の延長線上にないパラダイムの転換が求められる。 ビーム数に比例した出力を生むコヒーレントビーム結合は1960年以来、夢のレーザー技術であるが、ビーム径拡大によるパワー増大は限界に達しつつある現状を踏まえ、いよいよこの結合法によるハイパワーレーザー開発に本格的に取り組む時期が来たと言える。 本研究では、技術的に未開拓な時間空間分割された高出力レーザーの受動コヒーレント結合の実証を行い、現状のペタワット(PW=1015 W)級2)を超える極限的レーザー出力を実現できる基盤技術を確立する。 これまで各研究機関においてコヒーレントビーム結合が研究されてきたが、レーザー増幅媒質が小口径のファイバーに限られ3.4)、且つ空間的にビームを分割するだけであるため、パワースケーリングが難しい。また、空間的に分割した複数のビームのレーザーの光路長、即ち、位相を揃えるための高精度・高速能動制御が必要なため、高繰り返しレーザー発振が前提でシングルショット等の高エネルギー・低繰り返しレーザーや干渉性の低い高ピークパワー・極短パルスレーザーには不向きであり、この手法の適応は限定的なものであった。また、各ビーム光路を能動的に超精密に合わせたとしても、各ビーム波面は同じにならない。そのため、波面合成後にも時間空間強度変調の影響は残留し、ビーム結合効率の大きな低下をもたらす。 この問題を解決するため、本研究では各ビームの波面、即ち位相が受動的に一致するコヒーレント結合系を開発する。入力レーザー光を時間空間的に分割することにより、各ビーム出力を低減させる。時間的にも分割することで従来に比して劇的なパワースケーリングが可能となる。更に、分割ビームは各々の固体レーザー増幅器を用いることにより、光学損傷無しに驚異的なパワー増幅を得た後に1ビームに結合され、極高パワーレーザーを発生させること量子科学技術研究開発機構 関西光量子科学研究所 先端レーザー科学研究グループ 1.研究の目的と背景 これまでのレーザーパワー拡大の原動力は大口径増幅グループリーダー 桐山 博光 (2019年度 一般研究開発助成 AF-2019226-B3) ができる。現在、1-10 PW出力が寄生発振のため限界であるが、本光学系で、各分割パルスを10 PW出力まで増幅・結合することで、寄生発振の制限を超えたエキサワット(EW=1018 W)パワーを実現できる。 超高強度レーザー開発において、結晶や回折格子等光学素子の製造可能な大きさの技術的制限、光学系のレーザー損傷や寄生発振からの物理的制限があり、大口径化による飛躍的なパワー増大は限界域に達している。今回提案する技術は、現状の出力を飛躍的に高めうる可能性を秘めている。 本研究の特徴的な点は、時間的空間的にレーザービームを巧みに分割し、それら複数のビームが同じ光路を伝搬するように工夫するとともに、固体レーザー増幅器で大幅に出力を増幅させることである(図1)。 これまでの研究では、図2に示すように入力レーザーパルスを空間的に偏光ビームスプリッター(PBS)で2つのパルスに分割し、マッハツェンダー干渉計に配置されたファイバーレーザー増幅器により増幅する。その後、位相検出部から位相制御部にフィードバックを行うことにより、各レーザーパルスの光路長、即ち位相を精密に揃えて結合する方法が用いられてきた。この従来法では、ファイバーレーザーは小口径であり、空間的に分割するだけであるため、高エネルギー動作に不向きでパワースケーリングが難しい。 図1 本研究の概念的な説明 − 289 −次々世代超高速微細加工に向けたフェムト秒レーザーの 完全自動コヒーレント結合に関する研究

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