謝 辞 アブレーションに利用されたためではないかと考察される.従って,バーストモードでのアブレーションは,シングルパルスモードの場合と比較してアブレーション効率は低下するものの,加工深さを精密制御可能な加工法といえる. アブレーションされた領域の表面形状をSEMで観察した.図5にシングルパルスモード(a)と2イントラパルス列で構成されたバーストモード(b)で作製した試料のSEM像を示す.SEM観察には,図3の実験で作製されたアブレーション深さが約10 µmとなる試料をそれぞれ用いている.シングルパルスモードのレーザーブレーションで作製された試料の加工領域の表面形状は,レーザーの走査方向に沿って平行な線状の溝が形成されている.さらに加工領域は,レーザー照射前と比較して表面粗さが増大している.一方,バーストモードでアブレーションした試料の表面形状は,シングルパルスモードで形成された線状の溝は見られず,滑らかな表面形状を示している.バーストモードアブレーションで得られた滑らかな加工面は,アブレーション冷却が一つの要因として考えられる.すなわちアブレーション冷却により,非熱的な加工が実現され,平坦な表面が得られた.これらの加工形状に大きな差が発生する要因として,シングルパルスモードアブレーションでは熱影響領域の形成により粗い加工表面形状になったのではないかと考えられる.また別の要因として熱影響領域の図5 加工痕のSEM観察像((a)シングルパルスモード,(b)GHzバーストパルス(2イントラパルス)). 急峻な加熱・冷却サイクルの緩和があげられる.バーストモードでは,レーザー照射によって加熱・冷却サイクルが繰り返されるが,イントラパルス列による比較的小さいパルスエネルギーの連続的なレーザー照射により,急峻な加熱・冷却を抑制することができる.すなわち,熱影響による試料の溶融,再固化が緩やかに行なわれたことによって滑らかな表面形状を形成したと考えられる.以上の結果は,GHz領域の超高繰り返し周波数でレーザーブレーションを行うと,アブレーション冷却の影響によって,試料内に生じる熱拡散を抑制する仮説を裏付けるものである.またGHz バーストモードによる低アブレーション速度での精密なアブレーションは,より滑らかなアブレーション面の実現に寄与する.その結果,銅のGHz バーストモードによるアブレーションは,より品質の高いアブレーション表面を形成するために有効であると考えられる. 4.結論 GHzバーストモードフェムト秒レーザーパルスを用いた銅試料のアブレーション加工特性を検討した.その結果,バーストモードフェムト秒アブレーションは,従来のシングルパルスモードフェムト秒レーザーブレーションと比較して,アブレーション効率が低下することがわかった.一方で,バーストパルスのイントラパルスエネルギーは,シングルパルスモードにおけるアブレーション閾値より小さいにも関わらずアブレーション加工が生じる.この結果は,GHzオーダーの超高繰り返しレーザーパルス列であるバーストモードの照射によって,ターゲット材料内に発生した残留熱が加工領域から拡散する前に,後続のパルスが照射され,アブレーションを連続的に誘起したためと考えられる.また,イントラパルスエネルギーと照射パルス数をシングルパルスモードと同一にして10イントラパルスのバーストモードでアブレーションを行った結果,従来のシングルパルスモードアブレーションと比較して,アブレーション閾値が1/4に減少した.加工領域の表面観察から,GHz バーストモードによるアブレーションでは,アブレーション加工領域の平坦性がシングルパルスモードと比較して改善されることを見出した.以上のことから,GHzバーストパルスによる銅レーザーブレーションは,精密な加工深さ制御と,より高品質なアブレーション表面を形成するために有効な手法であると考えられる.一方,最近の実験結果では,異なる材料に対しては異なる特性を示すことが観察されており,今後多様な材料に対してGHzバーストパルスアブレーションの加工特性を検討することが必要である. 本研究を行うにあたり,公益財団法人天田財団一般研究開発助成(レーザプロセッシング:AF-2019224-B3,2019年度)の助成をいただけたことに感謝いたします. − 280 −
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