天田財団_助成研究成果報告書2023_2
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ション冷却を仮定するならば,バーストモードアブレーションによりターゲット内部温度が低下し,レーザーパルスで発生した熱のターゲット内部への拡散を抑制するため,熱が発生した領域(レーザー光が吸収された領域)近傍のみでアブレーションが生じ,加工深さが減少したと考えられる.一方,シングルパルスモードアブレーションでは,発生した熱の一部がターゲット内部に拡散し,レーザー光照射領域よりも深い領域がアブレーションされている可能性がある.シングルパルスモードのレーザーブレーションで用いられたレーザーパルスのパルスエネルギーは,入力レーザーパワーを繰り返し周波数で割った値であるが,バーストモードのイントラパルスエネルギーは,それをバーストパルス内のイントラパルス数でさらに割った値となる.バーストパルス内のパルスエネルギーは,シングルパルスモードではアブレーション閾値以下であるにも関わらずアブレーション加工が生じている.この結果は,GHz周波数領域の超高繰り返しレーザーパルス列であるバーストモードの照射によって,ターゲット材料内に発生した熱が加工領域からターゲット材料内部に拡散する前に後続パルスが入射され,アブレーションを連続的に誘起したためと考えられる. イントラパルスエネルギーをシングルパルスモードのパルスエネルギーと同じにして10イントラパルスからなるバーストモードでアブレーションを行った場合の,アブレーション深さの入力レーザーパワー依存性を図4に示す.実験は,照射領域に投入されるバーストモードとシン図3 異なるイントラパルス数でのGHzバーストモード加工によるアブレーション深さの入力レーザーパワー依存性. グルパルスモードの総パルス数が同一になるように,繰り返し周波数をシングルパルスモードでは200 kHz,バーストモードでは20 kHzとした(図4上部).シングルパルスモードの場合,アブレーション閾値は,おおよそ100 mWとなり,この閾値以下ではアブレーションが発生しなかった.一方で,10イントラパルス列のバーストモードでは,アブレーション閾値が25 mWとなった.すなわち,バーストモードアブレーションでは,シングルパルスモードでのアブレーションと比較して,アブレーション閾値が1/4に低下した.一方,シングルパルスモードでのアブレーション閾値となる100 mWでのバーストモードのアブレーション深さは,シングルパルスモードアブレーションとほぼ同じであるが,入力レーザーパワーが増加すると,バーストモードでのアブレーションは,シングルパルスモードの場合よりも著しく減少している.レーザーパワーが150 mWでのバーストモードでのアブレーション深さは,シングルパルスモードのアブレーション深さの半分以下である.つまり,入力レーザーパワーを関数とするアブレーション深さの直線の傾きは,バーストモードの方が遥かに小さい.これは前述した通り,アブレーション冷却を仮定した場合,ターゲット材料内部への熱拡散の抑制効果によって説明できる.すなわち,バーストモードではレーザー光のエネルギーが吸収された領域近傍のみでアブレーションが生じるのに対し,シングルパルスモードアブレーションでは熱の拡散によりより深い領域がアブレーションされたためと推察される.同時に,アブレーション閾値の減少は,熱拡散の抑制によりレーザーのエネルギーがより有効に図4 同一イントラパルスエネルギーでのアブレーション深さの入力レーザーパワー依存性. − 279 −

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