天田財団_助成研究成果報告書2023_2
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GHzバーストパルス列(イントラパルス列)に含まれるパルス数は最大25パルスまで調整可能である.図2に,高速フォトディテクター(Elecrto-Optics Technilogy, Inc., ET-3500)で観測した(a)10パルスで構成するGHzバーストパルス波形と,比較として(b)シングルパルスモードのパルス測定波形を示す.バーストパルス内の各パルス(イントラパルス)は,205 ps(周波数4.88 GHz)の一定の間隔を有している.このパルス間隔は,イントラパルス数を変更した場合でも205 ps一定の間隔を維持する.また,各イントラパルスのパルス幅は,イントラパルス数に関わらず,シングルパルスモードのレーザーパルスと同一のパルス幅(220 fs)を維持している.パルス列を構成する各イントラパルスのパルスエネルギーは,シングルパルスモードで設定されたパルスエネルギーをバーストパルス内のイントラパルス数で割った値とほぼ同じである.イントラパルスのエネルギーは,各種パラメーター制御によって,ほぼ一定となるように調整されている.しかし,バーストパルス列を発生させるレーザーシステム内部の電気光学系の特性上,イントラパルス列の最後尾のパルスが非常に強くなっている.また,最後尾のパルス後には,ごくエネルギーの図2 高速フォトディテクターで観測した(a)10パルスで構成するGHzバーストパルス波形と,比較として(b)シングルパルスモードのパルス波形. 弱いパルスが含まれる.ターゲット材料へ照射されるレーザーパルスのパルスエネルギーは,半波長板(l/2 WP)と偏光キューブビームスプリッタ(PBS)からなる偏光光学素子を用いて調整し,機械シャッター(Shutter)で照射パルス数を制御した.レーザーパルスは,焦点距離50 mmのアクロマートレンズ(Achromatic doublet)で直径19.2 µmのスポット径に集光し,試料表面へ照射した.試料には,無酸素銅板(寸法:10 mm × 10 mm,厚さ2 mm,JIS: C1020)を使用した.試料は,コンピュータ制御のXYZステージ(シグマ光機株式会社,OSMS20-85)にセットし,実際の2次元平面上へのレーザー直接描画による加工を想定して,走査速度1000 µm/s,ピッチ5 µmでレーザービームを1000 × 500 µm2の領域に走査した.加工領域のサイズは,ステージが移動方向を変更する際に発生する加減速によってレーザーパルスが過照射される領域と,加工領域周辺に形成される傾斜領域を分析結果から除去して,平坦な加工領域のみからの実験データを考察するために決定された.アブレーション処理後,レーザー走査型顕微鏡(Zeta Instruments Inc, Zeta-20)および走査型電子顕微鏡(SEM)(Thermo Fisher Scientific K.K., Quattro S)を用いて,アブレーションした領域の深さおよび表面形態をそれぞれ評価した. パルス数(2〜25パルス)で銅のアブレーションを行なった場合におけるアブレーション深さの入力レーザーパワー依存性を示す.比較のため,シングルパルスモードのアブレーション結果も示す. バーストモード,シングルパルスモードとも,繰り返し周波数は200 kHzである.バーストモードで銅試料をアブレーションした場合,同じ入力レーザーパワーでのアブレーションの深さが総じて浅く,GHzバーストモードのアブレーション効率はシングルパルスモードよりも低いことがわかった.バーストモードでは加工効率が低下する理由の一つとして,プラズマ遮蔽の影響が考えられる.レーザーブレーションによって誘起されたプラズマの生成時間は,ターゲットとなる材料や照射されるレーザーの条件に依存するが,レーザー照射後10ps~数ns の時間スケールで発生し,その時間スケール以降に入射されたレーザー光を遮蔽する.特に銅をターゲットとしたアブレーションの場合,10-50 psからプラズマの膨張と密度の増加が始まり,1 ns付近で最大になる16).本実験で用いられたパルス間隔が205 psであるイントラパルス列のアブレーションを考えると,2番目のイントラパルスからプラズマ遮蔽の影響を受け始め,その後プラズマ遮蔽効果は増長する.以降,約1 nsでプラズマ遮蔽効果は飽和するため,5番目以降のイントラパルスは,1番目のイントラパルスと比較して,プラズマの遮蔽効果が最大となり,アブレーションに寄与できるエネルギーが激減するため,シングルパルスモードと比較して全体の加工効率が低下すると考えられる.別の理由としてアブレー 3.実験結果および考察 図3に,バーストパルス内のイントラパルス数を異なる− 278 −

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