天田財団_助成研究成果報告書2023_2
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キーワード:ファイバーレーザ溶接,二相ステンレス鋼,溶接金属 1.研究の目的と背景 近年、自動車車体の軽量化を目的に、抵抗スポット溶接による点溶接からファイバーレーザ溶接による連続溶接に転換するといったニーズが高まっている。ファイバーレーザ溶接は抵抗スポット溶接と比較して溶接時間を大幅に短縮することができ、溶接速度が速く、高精度の溶接が可能である。さらに、ひずみや焼けが少なく、高品質な仕上がりとなるため、他の溶接工法に比べて溶接継手強度が優れている。 フェライト相とオーステナイト相の二相組織からなる二相ステンレス鋼は高強度かつ耐食性に優れており、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)と比較して約2倍の高強度を有する1)。そのため、構造材の板厚を薄くすることで軽量化や使用量を削減することが可能となる。本研究で用いた二相ステンレス鋼(SUS821L1)の耐食性はSUS304と同等であるため、主に河川内設備や化学プラントなどの構造材として使用されている。一方、北海道のような積雪寒冷地で使用される大型機械部品の構造材には高強度と軽量化、さらには耐食性も求められる。そのため、二相ステンレス鋼板同士の突合せ溶接にファイバーレーザ溶接を適用し、ファイバーレーザ溶接の溶接適正条件の確立を目指している。 そこで本研究では、ファイバーレーザ溶接を用いて二相ステンレス鋼板同士の突合せ溶接を行い、溶接継手部における断面組織と機械的特性との関係について検討した。また、実機使用環境における溶接継手の健全性評価について検討するため、耐食性を考慮して過酷な複合腐食試験を施した突合せ溶接試験片の引張強度特性について検討した。 2.実験方法 本研究で用いた二相ステンレス鋼は化学成分(mass%) Fe-21Cr-2Ni-3Mn-1Cu-0.17NからなるSUS821L1であり、幅32mm、長さ280mm、厚さ1mmの板状にレーザ切断されたものである。 図1は、本研究で用いたファイバーレーザ溶接システムと溶接の様子を示し、多関節ロボットに取り付けられた溶接ヘッドによって溶接施工が自動化される。ファイバーレーザ溶接の条件はレーザ出力1kW、溶接速度2000mm/minで行い、アシストガスに窒素を用いた。なお、レーザ出力1kWでは溶込み不足による未貫通溶接が確認されたため、北海道科学大学 寒地先端材料研究所 (2019年度 一般研究開発助成 AF-2019218-B3) 教授 齋藤 繁 レーザ出力を2kWに変更した。開先突合せ部はI型開先とし、作製した突合せ溶接試験片からは12mm角にそれぞれレーザ切断して溶接継手小片を15個採取した。レーザ切断およびファイバーレーザ溶接は(株)トリパス石狩工場で実施した。図2は、溶接継手小片の外観を示す。図中の上部と下部はそれぞれ二相ステンレス鋼板であり、中央部に溶接ビートが形成されている。レーザ切断後の溶接継手小片は樹脂埋めした後、溶接継手小片に対して、垂直方向に切断した。溶接継手小片の切断面は、ダイヤモンド研磨材により鏡面研磨した後、10%しゅう酸電解エッチングを行い、光学顕微鏡を用いて溶接継手小片の断面組織観察を行った。 図1 本研究で用いたファイバーレーザ溶接システム と溶接の様子 溶接方向 二二相相スステテンンレレスス鋼鋼板板 母母材材AA母母材材BB二二相相スステテンンレレスス鋼鋼板板 図2 溶接継手小片の外観 溶溶接接ビビーートト 55mmmm − 250 −ファイバーレーザ溶接を用いた二相ステンレス鋼溶接継手の機械的特性と耐食性を考慮した溶接継手部の健全性評価に関する研究

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