天田財団_助成研究成果報告書2023_2
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図9■(a)■レーザー加熱中のSrZnSiPコートUHMWPEディスク表面温度の変化、(b)露光直後のディスク表面のサーモグラフ、及び(c)表面温度分布。 図11■(a)レーザー加熱後のコロイダルシリカコーティング層端部のSEM観察像と(b)アルカリ処理後のコート層端部。 SrZnSiPとコロイダルシリカを種々の割合で混合してUHMWPE基板にコーティングしレーザー溶着したディスクから溶出するイオン濃度を測定した結果、図12に示すように、コロイダルシリカから溶出するケイ素イオン濃度は先のSrZnSiP単独の場合と比べて5倍以上増加することが明らかとなった。 図10■レーザー加熱後のSrZnSiPコーティング層端部のSEM観察像(a)と酸処理後のコート層端部(b)。 ■ (a)(b)(a)(b)られたことから、ここではシリカ微粒子として独立して添加することを検討した。シリカ微粒子としては市販される単分散性オルガノシリカゾル(粒子径12nm、日産化学工業MA-STメタノール分散液)を用いてUHMWPEディスク表面にコーティングし、アパタイトの場合と同様の条件でレーザー加熱した結果、コロイダルシリカについてもUHMWPE基板に強固に接着することが確認された。レーザー加熱後のコロイダルシリカ層端部のSEM観察像を図11(a)に示した。水酸化ナトリウム水溶液によりコロイダルシリカ成分を溶解除去したところ、同図(b)に示すようにコート層下部に位置していた部分のUHMWPE表面が約250nmの厚みで一様に隆起していることが確認された。この場合の隆起表面は平坦で単分散性シリカ微粒子で形成される均一なマトリックス構造の内部に溶融したUHMWPEが浸透したことによると推測された。極めて高粘性のUHMWPEが先のPEEKの場合と同様に多孔質セラミックス層の細孔内に浸透することは通常考えにくいが、一方で、ナノスケールの空間内に閉じ込められた高分子は分子間の絡み合いから解放されることで、見掛け上の粘度が大幅に低下することが知られている(8)。上記の結果は、アパタイトやコロイダルシリカ粒子からなる多孔質マトリックス内のナノポア内部に浸透圧とナノスケール環境における高分子鎖の特異的な挙動が相まってUHMWPEのような超高分子量ポリマーが自発的に浸透し得ることを示したものである。 − 247 −としてUHMWPE表面は融点(~145 ℃)に達し、ディスク全面でほぼ均一な温度分布を示すことが確認された(図9)。熱溶着したSrZnSiP層はUHMWPE表面に強固に接着し、コーティング層は剥離できなかった。 熱溶着後のコーティング層の端部をSEM観察したところ(図10(a))、SrZnSiP層が基板表面から約3μm程度の厚みで形成されている様子が観察された。SrZnSiP成分を酸で溶解除去したところ(図10(b))、アパタイトの下面にあったUHMWPE部分は全体として周囲から約1μm程度隆起しており、その表面には微細な凸凹構造が形成されていることが判明した。この結果から、先のPEEKの場合と同様に、溶融したUHMWPE樹脂が多孔質アパタイト層内部の間隙に浸透して両者のコンポジット層が表面に形成されていることが明らかとなった。 さらに、アパタイトに替えてシリカ微粒子についても同様にレーザー溶着を検討した。シリコンはアパタイトと同様に骨形成促進作用を有するとともに血管新生を促進することから新生骨形成に優位に作用することが期待される。SrZnSiPの結晶構造中に導入したシリコンでは導入量が限られその作用が十分に発揮できないことが考え

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