キーワード:レーザー接合,インプラント,骨癒合性■ ■■■研究の目的と背景■よりある程度我慢出来る範囲であれば経過観察となるが、それとは別に強い痛みにより生活に支障を来すような場合には痛みの原因を特定し、除痛のため手術を含めた対応が必要となる。原因が特定される場合、多くは脊柱管狭窄症や脊椎すべり症、椎間板ヘルニアなどが占め、保存的治療で改善が期待できなければ外科的手術が検討される。手術には大別して除圧術と固定術の二つの方法があるが、主症状が脊椎の不安定性や変性による場合には固定術が検討される。 脊椎固定術は、変性した椎体や椎間板を切除し上下の椎体間を固定するためにケージと称される脊椎インプラントが椎体間に挿入される。従来はチタン製ケージが専ら使用されてきたが、“応力遮蔽”効果の影響で近接位の骨に骨萎縮などの弊害を生じることから、高齢者や特に骨密度の低下した患者への適用に問題があった。そのため強度的に海綿骨に近いポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製ケージが登場し、より広範な適用が期待されたが、PEEKには骨癒合性が無いため移植床への固定が不十分で、術後にインプラントのすべりや脱転の問題があった。このためPEEK表面にチタンを低温溶射したチタンコーティングPEEKケージが開発され、初期固定性の獲得と骨癒合性の向上が期待されたが、その後の実際の臨床試験では、未コートのPEEKケージと比較して優位性は認められていない(1)(2)。チタンは骨伝導性を示すが、必ずしも十分な骨癒合性を示すわけではなく、表面の物理的形状と化学組成が骨癒合性に大きく影響し、かつてのセメントレス人工股関節ステムなどの開発研究を通して、チタン表面にアルカリ処理を施して生体内でアパタイトの析出を誘起させることで漸く満足できる骨癒合性を示した経緯がある(3)。本研究では、脊椎インプラント2019年に実施された厚生労働省による国民生活基盤調査(大規模調査)によると、健康状態に関して何らかの自覚症状のある人数(有訴者率)は、302.5(人口千人当たり)で症状としては男女ともに腰痛と肩こりが首位を占めている。腰痛は男性で第一位(89人/千人)、女性で第二位(118人/千人)にあり、人口に換算すると全国で約2500万人が腰痛の悩みを抱えていると推計される。症状がさらに進み通院に至った患者数を見ても、腰痛による通院者数は凡そ600万人にも上るが、高齢化の進行とともに患者数は年々増加傾向にある。腰痛の約85%は原因を特定できない非特異性腰痛で、痛みが対処療法等に奈良県立医科大学■整形外科学教室■( ■■■年度■一般研究開発助成■■■■ ■■■ ■■■■■)■博士研究員■古川■彰■ ■■実験方法■PEEK表面を生体活性化する方法として、チタンコーティング以外に硫酸処理、プラズマ処理などの利用が報− 243 − として利用可能な骨癒合性に優れたPEEK材料を提供することを目的に、骨伝導性に加えて骨形成促進機能を付与するためPEEK表面に各種アパタイト微粒子をレーザー溶着する技術開発を進めた。■ 告されているが、脊椎インプラントとして利用可能であるために骨形成促進作用を伴う骨癒合性を付与することは困難であった。本研究では、具体的な検討項目として、(1)骨形成促進作用を有する各種アパタイト微粒子をPEEK表面に炭酸ガスレーザーを利用して熱溶着する、(2)アパタイト結晶構造解析と徐放されるイオン濃度の制御を検討する、(3)in vitroおよびin vivoの両方の系で、様々なアパタイトを溶着したPEEKの骨形成促進作用と骨癒合性に関する効果を検証する、さらに(4)本研究の拡張としてPEEK以外のインプラント用樹脂として超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)に対する同様な検討を実施した。 ・■■実験装置とレーザー溶着試験方法■本研究に使用した炭酸ガスレーザーは、30W出力、波長10.6μmのキーエンス社製3-Axis Laser Marker ML-Z9510を使用した。レーザー照射中において、表面温度は高速反射温度計digital pyrometer IGA6/23, LumaSense Technologies, Frankfurt, Germanyを使用してリアルタイムで測定した。さらにサーモグラフィー(Thermocapture,THG-01, Custom Corporation, Japan)を使用して表面温度分布をレーザー照射直後において測定した。デフォーカス条件でスポット径は140μmとし、duty cycleは100%でスキャンピッチ70μmの条件で様々な走査速度と繰り返し露光回数の組み合わせで表面温度がPEEK樹脂の融点に達するよう最適な溶着条件を求めた。 ・ ■試料の作製と評価方法■PEEK樹脂はVictrex PEEK 450G (Victrex社製, UK)を13mmφ×1mmのディスク状に裁断した試料を用いた。アパタイトとして市販されるハイドロキシアパタイト(太平化学産業㈱ HAP-100)とともに以下の各種ストロンチウムアパタイトを合成し本研究に用いた。即ち、ストロンチウムアパタイト(SrHAP), ケイ酸置換アパタイト(SrSiP), および亜鉛含有ケイ酸置換アパタイト(SrZnSiP)の3種類のストロンチウムアパタイトを合成し、エタノーレーザー接合による■■■■製脊椎インプラントの骨癒合性改良研究■
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