1.研究の目的と背景 キーワード:超短パルスレーザー,モード同期,半導体レーザー励起 高出力,すなわち,高平均出力かつ高エネルギーの超短パルスレーザーは,金属をはじめとした様々な材料の超精密加工の研究に用いられている.これらの研究の実用化および産業化に対する最大の問題は,レーザーの価格が数千万円以上と極めて高価なことにある.この問題の生じる根本的な理由は,レーザーの装置構成が複雑であり,かつ効率も極めて低いことに起因している.■まず,高出力超短パルスレーザーはモード同期レーザー発振器と増幅器で構成されている.この中で特に増幅器が大型かつ複雑なため,装置全体が複雑になる.装置の制御のために熟練された技術を必要とする場合も多い.さらに,製作には高価な部品も多数必要とする.例えば,増幅器からの戻り光の防止のために数■■万円クラスの高価なアイソレーターが必要であり,増幅器には高速光スイッチとして用いるために数百万円クラスの高価なポッケルスセルが必要になる.■また効率に関しては,例えば,出力■■級,パルス幅が数■■■■■■級のレーザーの効率は数■以下である.このパルス幅を■■分の■にするためには,さらに桁違いに効率が低下する.出力向上には大型の増幅器と励起用の高価な高出力レーザーが必要になり,価格がさらに上昇する.■このため,本研究では,高出力超短パルスレーザーの理論を構築し,この理論を用いて単純化および低価格化を実現するための手法を開発することを目的とした.まず,安価なエッジエミッター型の半導体レーザーを励起光源として,レーザー利得媒質を高密度励起することにより,損失による効率低下を克服し,量子限界に近い高効率化が実現できることを明らかにした.また,高密度励起に起因する光学歪や,半導体レーザーの低ビーム品質や高収を差に起因する効率低下も,高密度励起により克服できることを明らかにした.■出力パルスに関しては,連続波モード同期固体レーザーの共振器内部に高非線形性材料を挿入して自己位相変調を増強制御することにより利得帯域の限界を超える超短パルス化ができることを明らかにした.さらに,高密度励起により,従来に比べて桁違いに高い損失変調が可能になることに着目し,モード同期の損失変調を従来よりも極めて高くすることにより,自己位相変調を用いずに高速化飽和吸収体だけを用いても,利得帯域の限界を超える広帯域化と超短パルス化ができることを明らかにした. ために,利得媒質への入射励起パワー𝑃𝑃pを規格化したパラメーターである励起指数𝐹𝐹および,共振器内部パワー𝑃𝑃Lを規格化したパラメーターである共振器内部光子指数𝑆𝑆を以下の式で定義する. 𝐹𝐹≡2𝑓𝑓𝜎𝜎em 𝜏𝜏 𝑙𝑙 𝜂𝜂p 𝜂𝜂a 𝑃𝑃pℎ𝜈𝜈p 𝐿𝐿 𝑉𝑉L𝑆𝑆≡2𝑓𝑓𝜎𝜎em 𝜏𝜏 𝑙𝑙 𝑃𝑃Lℎ𝜈𝜈L𝑉𝑉Lここで,利得媒質の長さを𝑙𝑙,励起量子効率を𝜂𝜂p,励起光子エネルギーをℎ𝜈𝜈p,レーザー光子エネルギーをℎ𝜈𝜈L,利得媒質中のレーザーモード体積を𝑉𝑉L,また,レーザー上準位と下準位の局所ボルツマン分布𝑓𝑓1および𝑓𝑓2の和を𝑓𝑓とする.率𝑇𝑇の出力鏡による損失を含めた共振器内部の全損失𝐿𝐿は,共振器の残留損失𝐿𝐿iを用いて, 入射励起パワー𝑃𝑃pに対するレーザー出力𝑃𝑃oの比,すなわち,光光変換効率𝜂𝜂ooは,励起指数𝐹𝐹と光子指数𝑆𝑆を用いてここで,共振器内部と出力の間の結合効率𝜂𝜂cと原子量子効率𝜂𝜂qは, また,準4準位レーザーの下準位損失を除き,かつ,透過と表せる. 以下の式で表すことができる. である. 連続波励起,定常状態のときの励起指数と共振器内部光子指数の関係は,レーザー発振時には共振器内部で増幅されたパワーと損失により失われたパワーが一致するとい福井大学■学術研究院工学系部門■( ■■■年度■一般研究開発助成■■■■ ■■■ ■■■■) 准教授■川戸■栄■2.理論 ■ ・■■準■ff■■準位レーザーの効率に関する理論解析■■ ■■本研究では準3(4)準位系のYb:YAGを利得媒質とした.まず,レーザーの効率に関する理論解析では,準3(4)準位レーザーに関するレート方程式を用いた.まず,単純化の(1) (2) (3) (4) (5) (6) − 233 −高出力超短パルスレーザーの 単純化および低価格化のための技術開発 𝐿𝐿=𝐿𝐿i−ln (1−𝑇𝑇) 𝜂𝜂oo≡𝑃𝑃o𝑃𝑃p=𝜂𝜂c𝜂𝜂p𝜂𝜂q𝜂𝜂a𝑆𝑆𝐹𝐹 2𝑇𝑇𝜂𝜂c≡(2−𝑇𝑇)𝐿𝐿 𝜂𝜂q≡ℎ𝜈𝜈Lℎ𝜈𝜈p
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