表1 供試材とその機械特性 図2 V曲げおよび曲げ疲労試験片形状(単位:mm) 2.2 V曲げ加工 図3に示すようなV曲げ加工を実施した.パンチ幅Wp (a) 初期状態 (b) V曲げ (c) 除荷 (d) レーザ照射 図3 V曲げ加工概略図 1. 研究の目的と背景 2. 実験方法 キーワード:高張力鋼板,曲げ加工,レーザ局所加熱,疲労寿命 自動車の足回り部品などの高張力鋼板曲げ加工製品において,疲労特性に及ぼす残留応力の悪影響が問題視されることがある.一般に曲げ加工を受けた板材の曲げ部内側表面には引張残留応力が生じており(図1 (a), (b)参照),この引張残留応力が成形品の疲労寿命に悪影響を与えるとされている.そこでレーザ照射により曲げ部を局所加熱し引張残留応力を低減させたり疲労寿命を向上させたりする1)といった対策法がある(同図(c)参照).しかし,レーザ照射に伴う曲げ部残留応力の変化,レーザ照射条件と曲げ部疲労寿命の関係などは未知の部分も多い. そこで本研究では,高張力鋼板曲げ加工部のレーザ局所加熱が残留応力や疲労寿命に及ぼす影響について基礎的な調査を行うことを目的としている.強度レベルの異なる数種の高張力鋼板に単純なV曲げ加工を施して曲げ部の外側表面にレーザ照射を行い,曲げ疲労試験を行ってレーザ局所加熱が疲労寿命に及ぼす影響を調査した.またレーザ局所加熱に伴う曲げ部残留応力の変化を実測するとともに,硬さ分布や組織変化についても調査し,これらの因子と疲労寿命との関連を考察した. 2.1 供試材および試験片 3種の高張力鋼板SPFC590Y,780Y,980Yを供試材として用いた.いずれも板厚1 mmの2相鋼板である.供試材の機械的特性を表1に示す.試験片形状は図2に示すとおりであり,ワイヤカット加工で作製した.試験片長手方向と圧延方向を一致させた. 広島大学大学院 先進理工系科学研究科 (2019年度 一般研究開発助成 AF-2019033-B3) 准教授 日野 隆太郎 (a) 曲げ応力分布 (b) 残留応力分布 (c) レーザ照射 図1 V曲げ加工部の応力分布とレーザ局所加熱の模式図 とダイス幅Wdはともに22 mm,パンチ先端半径Rpは1 mm,パンチ先端角度は90°である.V曲げにおいてパンチで板材を強圧下するボトミングは行わず,パンチ-ダイス間クリアランスが板厚の1.2倍となった時点で曲げを停止し,直ちに除荷した.パンチ速度は0.03 mm·s−1とした.その後,次節に述べる要領で曲げ部のレーザ局所加熱を行った. − 171 −高張力鋼板曲げ加工部の残留応力と疲労寿命に及ぼす レーザ局所加熱の影響
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