キーワード:酸化スケール,熱伝導率,構造 ■ 圧延と仕上げ圧延を経て,水冷却される.このとき,各圧延前には鋼表面に存在する酸化膜(以降,酸化スケール)が高圧水によって取り除かれているが,高温であるために鋼は瞬時に酸化されて表面に厚さ数10 μmの酸化スケールがある状態で圧延,冷却されている1).したがって,鋼の圧延を高精度に行っていくためには,表面の酸化スケールの存在を考慮する必要がある. このような背景のもと,鋼の熱間圧延のロール圧延中におけるロールと被加工材の界面の現象についてロールバイト中のスケールの変形や被加工材からロールへの酸化スケールを介した熱移動等の解明に関する研究が行われている.既往の研究では,酸化スケールの存在を考慮することで圧延中の酸化スケールの挙動が明らかになり,表面欠陥等を防止し操業を安定化させるための基礎的な理解が進んでいる2).この研究では,低炭素鋼板を対象として比較的単純な酸化スケールが取り扱われている.また,東海林らは,約900℃に加熱した鋼板の水冷実験を行い,酸化スケールが存在するとより高温で急激に冷却されることを報告している3).鋼板の冷却に対しても,酸化スケールの存在は無視できず,その熱物性値に基づく理解が必要とされている.この研究においても,単純な酸化スケールが用いられていた. 一方で,実際の鋼板は合金元素が添加されることも多く,酸化スケールもそれに応じて変化する.すなわち,空隙を含む構造,割れ,酸化膜の化学成分などが変わってくる.酸化スケールは被圧延材からロールへの熱伝達における熱抵抗因子であるため,その熱伝導率の値は重要である.熱伝導率は,空隙構造や化学成分,また,空隙に存在する物質によって変化するため,それらの影響を評価しておくことは実用鋼板の熱間圧延の今後の高精度化に向けて必要なデータになると考えられる. 酸化スケールの熱伝導率に関する既往の研究では,主として鉄を熱酸化させたFeOスケールおよびFe3O4スケールが試料として用いられてきた4-10).これらは緻密であり,空隙のない構造をしている.一方で,上述のように実際の酸化スケールは空隙も含まれている.以上より,本研究では,酸化スケールの構造に着目して,見かけの熱伝導率を評価する.ここで,”見かけ”とはデータブックに掲載され1.研究の目的と背景 ■鋼の熱間圧延工程では,加熱炉から出されたスラブは粗芝浦工業大学■工学部■材料工学科■ff ■■■年度■一般研究開発助成■■■■ ■■■■■ ■■■■■准教授■遠藤■理恵■2.実験方法 ているような熱物性値ではなく,より現実的な酸化スケールの構造や存在する雰囲気を加味した値であることを指している.■ ・■■方法■熱伝導率()は以下の式を用いて求められる. ここで,Cpは熱容量,ρは密度,λは熱拡散率,bは熱浸透率を示している.通常,熱伝導率は式(1)を用いて求められているが,本研究では式(2)によって求める.熱浸透率測定にはホットストリップ法を用い,熱拡散率測定にはレーザフラッシュ法を用いた. ・ ■ホットストリップ法による熱浸透率測定■図1(a)にホットストリップ法の模式図を示す.ヒーターとしてPt-13%Rh箔(長さ40 mm,幅3 mm,厚さ10 μm)を用い,2つの試料の酸化膜がある面で挟む.試料とヒーター間の熱抵抗を無くすため,両者の間にグリスを塗布し,ヒーターを試料間に挟み,万力で締め付けた.ヒーターに定電流を供給するとヒーターは加熱され,その熱は酸化膜に伝わり,酸化膜の熱物性に応じた温度上昇を示す.時間初期の温度上昇(電圧として測定)から,熱浸透率は以下の式より求められる. ここで,Q は単位長さ当たりの発熱量,aはヒーターの半幅,Tはヒーターの温度上昇,tは時間を示す.実際には図1(b)のようにヒーターの温度上昇はヒーターの抵抗変化として4端子法により測定する. 測定は図2に示すチャンバ内で行った.チャンバは真空とガス置換できるようにしてある.試料はチャンバ内に設置し,測定に必要な4つの端子をチャンバの外に取り出した.ガルバノスタットを用いてヒーターに定電流(4.5 A)を流し,電位差を測定しヒーターの温度上昇を電圧変化(ΔV)として記録した. = Cp = b1/2 − 167 −(1) (2) (3) 熱間圧延工程において生成する酸化スケールの熱伝達特性に 対する構造と雰囲気の影響 𝑏𝑏=(𝑄𝑄2𝑎𝑎𝑎𝑎1/2)/(𝑑𝑑∆𝑇𝑇𝑑𝑑𝑡𝑡1/2)
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