天田財団_助成研究成果報告書2023_2
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図4 ビレット試験面押出し出口から変形領域内部8mm位置のビレット試験面表面部相当ひずみの比較(溝なし工具の場合) ッカース硬さは約23HV)を2枚合わせて使用した.格子線解析11)によるビレット金型内変形領域の塑性流動状態を調べるためにビレットの合わせ面の片方に1mm×1mmの格子線模様を機械加工で設けた.試験面の表面粗さは約 0.3µmRaに仕上げた. 2・2 実験条件 実験では各絞り工具ごとに押出し加工実験を行い,潤滑油の粘度の違いにより製品表面粗さ(平面工具側)がどのように変化するかを調べ,絞り工具形状による金型内部塑性流動の違いが加工表面の平滑さに及ぼす影響を検討した.試験面となる平面工具には,溝なし平面工具と溝列本数を3本設けた溝列平面工具を準備した.微細溝断面形状と寸法,および平面工具面上の配置位置を図1に示す.溝列は,金型内部のビレット変形領域内(溝列平面工具押出し出口部を0mmとしたとき,金型内部へ5.5mm〜7.5mmの部分)に配置した.図1に示すV字溝形状の溝列工具(未使用工具)は,加工実験1回目を実施した時の押出し初期の過程で溝列部にアルミニウムが流入凝着して微細溝列の溝断面形状が変化するが,2回目の加工実験以降では,溝列形状は大きく変化せずに溝断面形状が安定する傾向を示す. 平面工具(試験面)に実験前に塗布する潤滑油量については,これまでの溝列工具を使用した実験4)と同様に試験油の初期塗布油量を塗布質量で5mg(0.48mg/cm2)とした.試験用潤滑油には,粘度グレード(VG)の異なる5種類のパラフィン系無添加鉱油(VG7,VG32,VG100,VG220,VG460)を使用した.試験面以外のビレットとの接触面については,パラフィン系無添加鉱油(VG460)を毎回ほぼ同量となるよう塗布した.実験は室温にて実施した. 2・3 実験方法 30トン複動油圧プレスを使用して,平面ひずみ冷間押出し加工実験を行った.押出し変形が定常状態にある押出し変位35mmで,加工を停止してビレットを取り出した.押出し加工実験中の押出し荷重,プレスラム変位を記録した.実験終了後にビレットの表面観察と表面粗さの測定を行い,製品表面性状の検討を行った.また,ビレット合わせ面の格子線模様を写真撮影して拡大図から流れ場を求めて格子線解析を行い,ビレット変形領域内の相当ひずみを算出した. 溝列工具については,焼付き等がない場合は同一工具・同一潤滑油で2〜3回実験を行ったが,押出し実験後に毎回工具面をアセトンで軽く拭き取った後に次の押出し加工実験を実施した. 3.実験成果 3・1 絞り工具形状と塑性流動状態 図3は,溝なし平面工具を用いて各絞り工具で押出し加工実験を行い得られた最大押出し荷重を比較したものである.最大押出し荷重は,テーパダイ(Taper)を使用した場合に荷重がわずかに低くなり,凸形状ダイ(Convex)と凹形状ダイ(Concave)の場合,ほぼ同じ荷重でテーパダイの場合よりわずかに大きい値を示す.これは,金型内 部の絞り工具形状の違いによる工具面とビレットの接触面積の差が原因で,凸形状ダイと凹形状ダイの方がビレッ トの金型内接触面長さが長いことによる摩擦の影響であると考える. 図3 最大押出し荷重の比較(溝なし工具の場合) 図4は,溝なし平面工具による実験における格子線解析によって得られたビレット試験面表面の押出し出口から変形領域内部8mm(溝列工具の溝部入り口側)における相当ひずみを比較したものである.溝列工具を使用した場合,溝部分により潤滑油膜が減ぜられ加工表面の平滑加工がなされるため,ビレット試験面表面の相当ひずみの大きさは表面積拡大による油膜厚さの違い12)に影響するので重要である.変形領域内部8mmの位置はちょうど溝列工具の場合には溝列部入口部に相当するため,この位置での比較を行った.格子線解析によって得られた相当ひずみ値を比べるとテーパダイと凹形状ダイの相当ひずみより凸形状ダイの相当ひずみが絞り工具形状の影響で大きくなっている.このことは,金型内部の変形領域入口側により近い位置で凸形状ダイを使用した場合,試験面の潤滑油膜が薄くなる可能性を示している. − 159 −

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