■■■■■■■■2・2■異方向テーラードブランク■摩擦攪拌接合では,二つの素材で接合工具の回転方向と接合方向の関係が異なる.これらが同じ素材を前進側,逆の材料を後退側と呼ぶことにする.■■素材としては,厚さ1mmのA1050P-Oアルミニウム板を用いた.引張方向に対して圧延方向が0°,45°および90°となるように素材を切り出し,それぞれ0,45および90と呼ぶことにする.対称試験片では,引張り時にチャックの可動側が前進側となるように配置するものとし,可動側に45を,固定側(後退側)に0を配置した接合材を45/0と呼ぶことにする.対称試験片としては,このほかに90/45および0/90接合材を作製し,引張試験に用いた.非対称試験片としては,後退側を0として,前進側を0,45および90にした三種類の接合材を作製し,それぞれを0-0,45-0および90-0と呼ぶことにする.■■■2・3■引張試験とひずみの評価■引張試験には,図2に示すJIS5号試験片を半分に縮小したものを用いた.試験片の標点間距離は25mmであり,平行部の幅は12.5mmである.肩半径はR10mmとし,チャック部の幅は15mmとした.なお,引張試験は,チャック間距離を50mm,引張速度を 2mm/min として行った.■図2■対称試験片の形状■■異方向接合材については,それぞれの方向の材料で変形挙動が異なると考えられる.そこで,試験片の平均的な変形挙動と共に各材料の部分的な変形挙動およびひずみの変化を測定し,評価する必要がある.まず,対称試験片では,図3(a)のように試験片の長手方向中央(接合ビード部)およびそこから2.5mm離れた位置に引張方向と垂直にケガキ線を描き,そこを基準にして1mm間隔で15.5mmの位置まで両側に14本のケガキ線を入れ形状測定に用いた.■図3■形状の測定方法 なお,各材料の部分的な力学特性を中央から5.5mm(4番目の線)と13.5mm (12番目の線)の間で評価した.■■また,非対称試験片については,幅方向中央(接合ビード)から両側に2.5mm離れた位置にケガキ線を描き,試験片端とこのケガキ線を用いて幅方向の形状およびひずみ測定を行った.測定位置として,長手方向中央から両側に1mm感覚で8本のケガキ線を描き,それらを用いてひずみと形状の測定を行った.なお,平均的な力学特性は標線間の平均値として評価した. ■試験中は,一軸引張試験中に破断するまで,標線間が5%伸びるごとにデジタルカメラで試験片を撮影する.得られ■た写真について画像処理ソフトウェアを用いてケガキ線の両端の座標,非対称試験片の場合は長手方向に引いたケガキ線上の点の座標も測定し,これらから長手方向および幅方向のひずみを計算した.■ ■2・4■熱処理による接合ビードの軟化処理■■摩擦攪拌接合材について,攪拌部(接合ビード)の結晶粒は微細化されるため,高強度・低延性となった.そこで成形性の低下を抑制する目的で,接合ビードの焼鈍し処理による延性回復を試みた.採用した焼鈍し条件は,それぞれ相当条件として,H26(180℃,5時間),H24(220℃,4時間),H22(240℃,3時間)とO(350℃,2時間)とした.■ 3.実験結果■3・1■素材の各方向の力学特性■■接合材を実験する前に,参考として素材の引張試験を行った.図4(a)に素材の公称応力―公称ひずみ線図を示す.図より,0と90材料は同程度の応力レベルを示し,45はそれらより高いことが確認できる.細かく見ると,0の方が90より若干応力が高いが,伸びに関しては90の方が大きい.一方,45は伸びも最も高いことが見て取れる.図4(b)に示した実応力―対数ひずみ線図では,公称応力-公称ひずみほどの差は現れていない.ただし,45,0,90の順に応力レベルが高い傾向は同じである.■表2に素材の力学特性をまとめた.引張強さは最大の45に対して75.1MPaとやや低めであり,残りの方向はそれより8MPa程度低い値となった.全伸びには差が最も出ており,45で0.66とアルミニウムとしては非常に良く伸びている.90で0.51,0で0.44と,45には劣るもののいずれも良い伸びを示した.F値およびn値については通常のn乗硬化則で近似したものである.F値とn値について0と90では差がなく,ほぼ同じ大きさと言ってよい.45については,いずれも大きな値となっている.一方,r値については,一般的な場合とは逆に0および90で45より高い値となった.ただし,45のr値が異常に低く,これが良い伸びと関係があるように思われる.0および90のr値の大きさは一般の場合と同程度で0.6程度であった.■− 146 −
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