天田財団_助成研究成果報告書2023_2
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キーワード:塑性異方性,テーラードブランク,アルミニウム ■ 2・1■摩擦攪拌接合■■本研究ではアルミニウム異方向テーラードブランクの作製に摩擦攪拌接合を用いた.図1に,摩擦攪拌接合に使用した工具の形状および接合パラメータの定義を示す.摩擦攪拌接合においては接合工具の形状も重要な要素であるが,今回は単純な段付き丸棒形状とした.この工具の大径部をショルダー部,小径部をプローブと呼ぶことにする.なお,ショルダー部の角には材料押込みの役割を担う様に面取りを施している.段付き面の面取りのない部分の直径をショルダー内径と呼ぶことにする.主な接合パラメータとしては,前進角と工具の押込み量を定義している.前進角は工具の進行方向に対する工具の傾斜角であり,押込み量は板面に対するショルダー面取り部の押込み量である.■接合工具の寸法および接合条件を表1に示す.表からわかるように,ショルダー外径をφ4mm,ショルダー内径をφ2mmとし,面取り角を5°としている.プローブの直径および長さは共に1mmとした.前進角は面取り角と同じ5°とすることで,接合時に面取り部と板面は平行となる.押込み量は0.05mm,工具の回転速度は4000rpm,接合速度は125mm/minとした.■ 図1■接合工具の形状および接合パラメータの定義 アルミニウム合金テーラードブランクの利用は軽量化と共にコスト低減や精度向上などのメリットが期待できる.アルミニウム合金の摩擦攪拌接合の研究では接合特性に関するものが専らであり,接合材の変形および成形特性に関するものは少ない.しかし,テーラードブランク成形に関する基礎的な知見を得ることは非常に価値がある.■一方,テーラードブランクに関する研究については,その多くは材質や板厚の違いに注目したものであり,材料の方向を考慮して変形や成形特性を研究した例は少ない.同一素材についても,材料の変形抵抗,すなわち塑性係数(F値)および加工硬化指数(n値)や塑性異方性,すなわちランクフォード値(r値)は方向によって異なる.したがって,方向が異なる材料で作製した異方向接合材においても,素材の違いと同じような影響が生じるものと考えられる.■また,一軸引張試験などの成形性試験は,主引張方向とその垂直方向を対称軸とする系が直交対称性を持った試験である.一方,アルミニウムは結晶構造として面心立方格子構造を持ち,純アルミニウムに関しては一般にCube 方位の集合組織を持つ1).このような背景から,一般のアルミニウム材料は対称軸を0°および90°もしくは45°および135°としたおよそ直交四回対称の性質を有する.■試験の系を参照として,材料の対称性が試験の系と近い接合材と異なる接合材では,変形挙動が異なると考えられる.また,異種金属接合材を使用して深絞り成形を行った場合,二種類の金属が異なる異方性を持つため,成形した材料に耳の増大や吸収が発生する2).同種異方向接合材でもこのような挙動が生じるものと考えられる.■そこで本研究では,摩擦攪拌接合によって同一のアルミニウム板から素材を切り出して異方向に接合した異方向テーラードブランクを作製し,一軸引張試験を行った.異方向接合材は引張りの系の対称性と近いものとして,引張方向と接合ビードが垂直なもの(対称試験片)と,異なるものとして,接合ビードに平行なもの(非対称試験片)をそれぞれ作製し,変形挙動の調査およびr値などの力学特性の評価を行った.攪拌領域(接合ビード部)は結晶粒微細化のため,高強度・低延性化するため,試験片の変形に影響を及ぼす.そこで,対称試験片については焼鈍し処理を行い,変形挙動への影響も調べている.■京都工芸繊維大学■機械工学系■(2019年度 一般研究開発助成 AF-2019028-B3) 教授■飯塚■高志■2.実験方法■− 145 −表1■接合工具の寸法および接合条件 1.研究の背景と目的■アルミニウム異方向テーラードブランクの変形挙動の■解明とそれを用いたr値評価■

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