天田財団_助成研究成果報告書2023_2
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(2019年度 一般研究開発助成 AF-2019021-B3) キーワード:SEM-EBSD,集合組織,KAM 表1 イオンミリング法での研磨条件 図1 引張試験片とSEM-EBSD観察用試験片の切り出し 1.研究の背景と目的 EBSD分析では正極点図や逆極点図など各種方法で結晶方位マップを表示できるだけでなく,OIM(Orientation Imaging Microscopy:結晶方位イメージ像)解析ソフトと組み合わせることにより,集合組織のさらなる定量情報を得ることができる.このひとつにKAM(Kernel Average Misorientation:隣接方位差)がある1), 2).KAMは加工によって結晶粒内に導入された転位密度の分布を表すとされており(結晶塑性論においてGN(幾何学的必要)転位とSS(統計的蓄積)転位とを区別する場合はGN転位のこと),転位密度の分布は材料に付加されるひずみ量と比例成蹊大学 理工学部 システムデザイン学科 教授 酒井 孝 また,引張応力によりひずみを付加した後にこの中央部の20mmをSEM-EBSD観察用に切り出した.SEM-EBSD観察するにあたって,試料表面をクロスセクションポリッシャ・IB-19530CPを用いたリオンミリング法にて,表1の条件で精密研磨した.SEM-EBSDの測定箇所は,試料表面90μm×230μmの範囲で,観察倍率は全て500倍とした.SEM-EBSDによる走査点の測定間隔を示すStep数は,国内外のKAMを用いた評価で多く使用されていた0.5μm,1.0μm,1.5μmの3種類とした.このようにして作成したEBSD画像に対してOIM ver. 8を用いてIPF(Inverse Pole Figure・逆極点図)マップ,およびKAM値を評価した.KAM値は0°から最大4.9°までの分布として表示した. 3.解析結果および考察 3・1 引張試験結果 A1070の引張試験結果に対して,図2に応力−ひずみ線図と,表2に5%,10%,15%,20%,25%,30%の相当塑性ひずみを付加した引張試験の結果を示す.SS400に対すする.したがって,材料が塑性加工された時の相当ひずみ量の大小を調べる場合に,このKAM値で表すのが有用である3), 4).しかしKAM値は隣接方位差を示すだけで,物理量である相当塑性ひずみとの対の関係性はわかっていない.もしKAM値と相当塑性ひずみとの関係が定式化されて明らかになれば,塑性加工において導入された任意の場所の相当塑性ひずみが定量的に把握できることになる. そこで本研究の目的を,(1)KAM値と相当塑性ひずみの定式化,すなわちSEM-EBSD分析とOIM解析から得られたKAM値を,物理量を持つ相当塑性ひずみに換算すること.(2)KAM値はSEM-EBSD分析の測定点間隔(Step数)に依存することがわかっているため,これの変化についても確認すること,の2点とした. 2.供試材および実験方法 本研究では, 供試材として純アルミニウムA1070(FCC格子)と一般構造用圧延鋼材SS400(BCC格子)を用いた.A1070はH(加工硬化)材として納品されたため,345℃,1時間の条件で焼鈍処理を施してO(焼鈍し)材を製作した.両材料ともに図1に示すように,長さ1500mmの直径10mmの丸棒から,引張試験片として220mmを切り出した.縦ひずみ測定用(20%),横ひずみ測定用(5%)のそれぞれのひずみゲージを貼付した引張試験片に対して,ストローク速度2.5mm/min(A1070),5.0mm/min(SS400)の条件で引張試験を行った.相当塑性ひずみとKAMの関係を定式化するために,縦ひずみと横ひずみの絶対値の和が5%,10%,15%,20%,25%,30%になるように相当塑性ひずみを付加した試料をそれぞれ製作した. − 111 − SEM-EBSD分析から得られるKAM値と 相当塑性ひずみとの関係の定式化

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