天田財団_助成研究成果報告書2023_2
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2.実験方法 図2 SCP装置の外観写真 表1 供試材の化学成分 (mass%) N H 図1 SCPの表面改質原理 キーワード:Scanning cyclic press,表面改質,常温窒化. 耗性に劣るため焼付きを起こしやすいという問題があり,摺動部材として適用する際には対策が必要となる.金属の耐摩耗性を向上させる手法として,ガス窒化やプラズマ窒化に代表される窒化処理がある.チタンの窒化処理では,試料の表層に硬度に優れる窒化チタン(TiN)を形成させる.しかし,窒化処理には一般に高温と長時間を要するため,熱による強度特性の変化が懸念される1-3).一方,筆者らは,低荷重の振動圧縮負荷を材料表面に繰返し付与することで表層組織を改質するCyclic press(CP)およびScanning cyclic press(SCP)という新たな表面改質技術を開発した4-9).図1にSCPの改質原理を示す.CPは,精密な荷重制御の下で材料表面の1点にインデンタを用いて微小圧縮負荷を繰返し付与することで表面を改質する技術であり,SCPは試料を反力受けで支えながらこれに回転と軸方向への移動を与えることでインデンタを相対的に走査させ,CPを広範囲に適用する技術である.これまでに筆者らは,低炭素鋼S25Cに対して常温窒素環境中においてCPを施した結果,改質部表層にFe2Nの窒化層が形成されたことを確認した6), 7).この結果から,CP,SCP法を用いることで,金属材料表層に常温で窒化層を形成できる可能性が示された.そこで本研究では,純チタンの試験片に対して窒素雰囲気下でSCPを施すことで,チタンの常温窒化処理を試みた. 2・1 SCP装置 図2にSCP装置の外観を示す.本装置は,試験片に圧縮負荷を付与するインデンタ,試験片を支える反力受け,インデンタを駆動させる油圧アクチュエーター,インデンタによって試験片に付与される荷重を検知するロードセ1.研究の目的と背景 チタン系材料は比強度,耐食性,耐熱性などに優れた軽金属であり,CO2削減や省エネを背景とした機器の軽量化を目的として幅広い分野で用いられている.しかし,耐摩北海道大学大学院工学研究院 機械・宇宙航空工学部門 (2019年度 一般研究開発助成 AF-2019018-B2) 教授 中村 孝 ル,試験片に回転および軸方向の送りを与える2種類のモーター,コントローラなどからなる.また,真空チャンバを備えており試験片周囲の雰囲気を変えることができる.本装置では,振動するインデンタで試験片に付与される荷重を対面にある反力受けに接続されたロードセルで検出し,これをフィードバックすることによって,精密な荷重制御を実現している.2種類のモーターを駆動させ試験片に回転と送りを与えることにより,試験片表面全体を改質することができる. 2・2 供試材および試験片 供試材には工業用純チタン2種(TB340H)を用いた.表1に供試材の化学成分を示す.本供試材の平均粒径は17.5 µm程度であった.素材より切削加工で直径4.0 mmの丸棒型試験片を作製した.加工硬化層を除去するため試験片表面を#800~#2000のエメリー紙を用いて直径で約100 µm研磨した後,1 µmのアルミナ砥粒とダイヤモンド砥粒を用いてバフ研磨を行い,鏡面状に仕上げた. 2・3 SCPの改質条件 本試験では,最大圧縮荷重58.8 N(6 kgf),最小圧縮荷重0 N(0 kgf)の正弦波軸荷重を負荷周波数200 Hzで試験片表面に付与した.総負荷繰返し数は1×107 回とした.また, 試験片の送り速度は10 μm/sec,回転速度は1.3 rpm とした.改質範囲は試験片軸方向に8 mmの領域である. − 107 −O 0.113 C Fe 0.028 0.003 0.001 Ti Bal. 0.0007 雰囲気制御 Scanning cyclic pressによるチタン材料の常温窒化技術

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