3.3.接合強度に及ぼす表面処理の影響 Au Ag Cr Cu Ni Ni-P Sn × 〇 × × 〇 × × 織写真を示す。図より、特に突起の付け根部において、アルミニウムが充填されていない領域が一部観察されたが、摩擦攪拌によって、傾斜45°の突起の裏側でも、アルミニウムが充填されていることがわかった。ただし、接合界面に着目すると、拡大写真からも明らかなように、鉄鋼とアルミニウムは連続しておらず、その間には黒いコントラストで確認される欠陥(隙間)が存在している領域が多く観察された。すなわち、図8の引張試験結果は、充填されたアルミニウムの引掛り(アンカー効果)のみで得られた強度であり、従前技術である切削を利用した異種金属FSWで見られるような鉄とアルミニウムの材質的接合力は寄与していないことがわかった。 図8 種々の突起形状を用いた接合材の引張試験結果 図9 ①P = 3.0/= 45を用いた接合材の突起部断面 前節の組織観察により、鉄鋼とアルミニウムは材質的に接合しておらず、引張強度はアンカー効果のみで得られることがわかった。したがって、アンカー効果に加え、鉄とアルミニウムを材質的に接合できれば、さらなる強度上昇が期待できる。そこで、鉄鋼を削ることなく、発熱と材料流動だけで鉄とアルミニウムを材質的に接合する方法について検討する。金属表面には、汚れや酸化スケールが存在するため、金属を接合する際には、これらの汚染層を除去することが必須となる。異種金属FSWでは、これらの汚染層を除去する方法として、接合ツールにより接合面を切削するが、金属めっきの前処理工程として知られる脱脂や酸洗いによっても、汚染層を除去することができる。つまり、めっきと接する素材表面(本研究では鉄鋼の接合面を想定)は、汚れや酸化スケールのない清浄な面を維持していることから、FSW中の発熱と材料の塑性流動により、めっき層を剝離し清浄な鉄表面を現出させれば、接合ツールで鉄鋼を削ることなく、鉄とアルミニウムを材質的に接合できると考えられる。しかしながら、上記のような挙動が期待できるめっきの種類は、明らかになっていない。そこで、突起のない平坦な鉄鋼表面に、金、銀、クロム、銅、ニッケル、ニッケル-リン、錫の7種類の金属めっきを施した後、アルミニウムとFSWすることで、鉄とアルミニウムが材質的に接合するめっきの有無を調査した。表1に、めっきの種類と接合可否の結果を示す。表より、銀とニッケルめっきを施したサンプルでは、FSW後、鉄鋼とアルミニウムが分離することなく一体化しており、接合が可能であることが確認できた。一方、それ以外のめっきについては、FSW後も鉄鋼とアルミニウムは分離したままであり、接合できなかった。そこで、銀めっきとニッケルめっきにおいて、断面組織観察および成分分析を実施し、接合状態を調査した。図10および図11に、銀およびニッケルめっき鋼のFSW後の接合界面の分析結果を示す。銀めっきの接合材断面を分析した図10より、銀は鉄鋼表面には観察されず、アルミニウム内に分散していた。また、接合界面には5 m以上の厚さを有する鉄とアルミニウムのIMCが生成していることから、FSW中の塑性流動により、鉄鋼表面の銀めっきが剥離(消失)し、露出した鉄の清浄面とアルミニウムが金属拡散反応を起こしたと考えられる。一方、図11のニッケルめっき鋼の接合材の場合には、ニッケルは接合後も鉄鋼表面に存在しており、FSWによる発熱と塑性流動では、ニッケルめっきを鉄鋼表面から引き離すことはできなかった。しかしながら、ニッケルとアルミニウムの界面で金属拡散反応が起こり、ニッケルとアルミニウムのIMCが生成することで、鉄鋼とアルミニウムが材質的に接合することが認められた。以上の結果より、鉄鋼表面に、銀もしくはニッケルめっきを施すことにより、接合界面を削ることなく、鉄とアルミニウムを材質的に接合できることがわかった。そこで、前項の3.2.で示した②から⑦の突起形状に対し、銀およびニッケルめっきを施し、FSW後、引張試験を行うことで、各めっきが引張強度に及ぼす影響を調査した。 図12に引張試験結果を示す。比較のため、図8で示した未処理の場合の結果も示している。図中の銀めっき鋼の接合材に着目すると、が45°の場合は、未処理に比べ 表1 めっきの種類と接合可否 − 105 −
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